二十五時 (6)-800

蔵書棚より 二十五時創刊号 きんらん社/A5判貸本マンガ(雑誌形式)


東京のきんらん社から昭和34年に刊行されたモノです。「貸本漫画は「奥付が無い」場合が多い」という認識が一般的ですが、これは、昭和34年7月5日印刷 昭和34年7月10日発売と、記載があります。背表紙では「ステレオサスペンス」と冠し「サスペンスグループ」編としています。

大阪・日の丸文庫「影」の成功により雨後の筍のように出てきた雑誌形式(短編形式)の貸本漫画、と一般的には理解されていますが、東京・兎月書房の摩天楼(劇画工房)の成功も、きんらん社にとっては、大きな刺激になったのかもしれません。「サスペンスグループ」編としているのも「劇画工房・編集」に倣ったのかもしれませんね。

八人の作家が作品を寄せていますが、「トキワ荘系」の作家である「森安なおや」氏の作品が掲載されているのが興味深いところ。トキワ荘の仲間たちが児童雑誌で連載を持つなか、貸本漫画という舞台しかないのか?という森安氏の「屈辱」「諦念」「哀しさ」が存在したかもしれません。貸本漫画は、やはり、マイナーであり、アンダーグラウンドな存在であったかと思うので。

その森安作品ですが、当方所有本は残念ながら扉(作品の1,2p)のページが1枚まるまる破り取られています。そして、この本には約10箇所ほど、マーカー(マジックインク?)による落書き(描き込み、イタズラ書き)が施されておりまして、その殆んどが、森安作品に集中しています(涙)。

マナーの悪いお客様が居たモノです(苦笑)。ばかばか、あほあほ、とかホントにたわいの無いイタズラ書きなのですが(怒)、「こんな本、見んでなかった」なる痛切な一文もあったりします(苦笑)。大事なオコヅカイを注ぎ込んだのに、全く楽しめずに怒りの絶頂に達したのですね(苦笑)。まあ、気持ちは分からんでもない。

二十五時 (1)-800二十五時 (2)-800

目次には記載無いですが、全ての作品について扉部分に「○○サスペンス」と記載があるのが興味深いです。上から順に(1)マウンテン・サスペンス(幽霊谷の秘密・山が舞台)、(2)サイエンス・サスペンス、(3)TVサスペンス、(4)森安作品は扉が破りとられていて確認できず、(5)ゴールデンデン・サスペンス、(6)ミラクル・サスペンス、(7)ピクトリアル・サスペンス、(8)ダイナミック・サスペンス(親分・河本おさむ)。

 「劇画」という呼称に対抗する意味もあったのではないかと?推測します。

二十五時 (5)-800奥付部分

 

二十五時 (4)-800

 

親分ボス・河本おさむ。「手塚調」+「関西の日の丸文庫の流れ」で、8作家中最も洗練された絵柄かと思います。

二十五時 (3)-800

森安作品は鉄道公安官(当事の国鉄)を主人公に据えた作品で、当事の鉄道事情や社会情勢が伺える内容です。

全8作品、児童まんがというよりは、ハイティーン向けでも通じる内容かと思います。読者対象については、編集者の考え方が確実に存在するかと思いますね。