カテゴリー別アーカイブ: ハクダイのブログ

柳生秘帖・風の抄 谷口ジロー(原作/古山寛)を読む

先週、ふらりと立ち寄った書店で、何気なく本棚を見ていたら、リイド社SPコミックスA5判の本作を発見。帯には、フランス芸術文化勲章受賞の世界的巨匠が描く 超一級エンターテインメント!! とある。あれ、これ読みハンパだったな・・リイド社からも出てたんだ・・・という事で、手持ちの秋田書店版(A5判)が読みかけになっているのを思い出して早速、最後まで読んでみました。

ほんまりうと組んだ傑作「漱石事件簿(新潮コミック) 1989年」 を読んで以来、原作古山寛の名を気にしていましたが、いやあ、期待を裏切らない面白さでした。簡単にまとめると、柳生十兵衛と、幕府転覆を企てる後水尾上皇および徳川頼宣との死闘を描いた傑作時代劇エンターテインメント、というところでしょう。小島剛夕氏や平田弘史氏の劇画の雰囲気とは全く異なる雰囲気を持つ絵柄・筆致ですが、「これこそが、正統・時代劇」と言っても過言では無いでしょう。

手持ちの秋田版(A5判)の巻末には、古山氏と谷口氏両氏のあとがきが1ページずつ掲載されているのですが、古山氏曰く「とくに後書きのようなものもいらない、娯楽時代劇である」、谷口氏曰く「いうまでもなく、時代劇は私にとって初めての試みでした」、がそれぞれ、かなりに興味深いです。

 ハクダイ手持ちの秋田A5判意外にも秋田書店の文庫版、そしてリイド社版(A5判)があり、キンドルなどの電子版もあるようです。

 1992年のヤングチャンピオン(秋田書店)連載というのが意外な気もしますが、同年6号から14号までの全9回の連載のようです。ヤングチャンピオンは隔週刊?月2回刊?ちょっと微妙です(苦笑)。

 この作品については、、ウイキペディアに項目があり、谷口ジロー作品の人気ぶりが伺えます。

クリック⇒風の抄 ウイキペディア (参考にさせて頂きました)

クリック⇒amazon⇒風の抄(リイドコミック)

風の抄(谷口-古山)

手持ちの秋田書店版(A5判)

貸本マンガについて

いわゆる「貸本マンガ」というジャンルの存在自体が、今となっては理解しにくいモノとなってしまっています。そして、さらに言えば、作品収録の形式も大きく言って二つに分けられていて、これが、また事態を理解しにくく (ややこしく) しています。収録の形式としては、次の二つに大きく分けられます。

 (1)一人のマンガ作家が、まるまる一冊を全て描くモノ。単巻(一巻のみ)で終わる場合と、全二冊から十冊以上となる場合もある。また、二冊目(二巻以降)が存在する場合も、次の二つの場合があります。 ①基本的に一冊で読みきり完結して、連作的に二巻以降が続巻するモノ ②一冊ごとの読みきり連作では無く、巻ごとにストーリーが展開していくモノ。 代表例としては①⇒辰巳ヨシヒロ「弾丸太郎」、②白土三平「忍者武芸帳」17巻(厳密には、最終十七巻は、十六巻の前・後編の二冊として刊行)

 (2)複数の作家が、短編を寄稿して”雑誌”形式としたモノ。 日の丸文庫『影』、セントラル文庫『街』が、その代表格といえるでしょう。基本的に月刊スペースで刊行される場合が多かったようです。そして、ヤヤコシイのはその通巻表記です。普通、雑誌だったら、「月刊・少年」昭和33年(1958年)12月号と、年と月で特定できます。ちなみに、「少年」は光文社より刊行されていた月刊雑誌で、『鉄腕アトム』、『鉄人28号』などを長期連載していた昭和の代表的な月刊雑誌です。 『影』の33集(ないしは号)と表記するのみで、発行年の情報は一切ありません。このいわゆる「短編誌形式」のモノは一冊(一号ないし一集)で終わってしまったモノも少なくなく、数十まで続けば、かなりの「人気誌」であったと言えるでしょう。一般的には、この短編誌形式の嚆矢とされるのが、まさに『影』で、号数が百番台の大台に乗った短編誌は『影』のみかもしれません。

いわゆる。貸本マンガの世界を知るには、次の一冊が最適かと思われます。

 貸本マンガRETURNS・ポプラ社 クリック⇒ amazonのサイトへ

貸本マンガRETURNS

 また、電子書籍で、短編誌『影』を読むことが出来ます。

⇒クリック ebookjapanのサイトへ

 

 

 

 

 

緑の家 M・バルガス=リョサ/木村榮一訳を読む 

こんにちは ハクダイです。なんか二日続けてブログ投稿です(珍しい)。ですが、きょうもマンガの話題では無くて標記の本を読んだ件です。なんか読み始めたのが半年だか1年くらい前で、今日午前中、やっと読み終わった嬉しさで、書かずには居られないのでした。

というものの、どこまで「読めて」いたというか、内容を「理解」できていたのか?というと、かなり怪しくて、全体像がオボロゲナながら掴めたという程度ですね、恥ずかしながら。400p二段組で小説としても長いといえば長いし。

現実なのか妄想なのかの区別もさせえてもらえず、現代(20世紀中期頃?)でも、かの地では こういう事は本当に有りえるの?と半信半疑な不安定な状況にされて、そして、舞台そのものが現代と中世そして古代までもが交錯する・・・・・とにかく、生半可な気持ちでは読み通すのさえ困難な小説でした(少なくてもハクダイ的には)。登場するキャラクターも多いし。

 なんですが、自分にとって「簡単に読み飛ばせる小説」を10冊読むより、この1冊をなんとかかんとか読んだ方が、意義のある読書であった、と断言できます。

 巻末の14ページにも及ぶ解説を読んで、自分の理解が、それほど間違っていないという事が分かって安心(少しは)したのですが、作者は緻密な計算の上に作品世界を構築しているようですね(当たり前ですが)。裏表紙に記載のプロフィールにある顔写真をみると、世界的に著名なサッカー監督ですか?と思ってしまいます。あんまりサッカーに詳しくないハクダイですが。

っと、ここまで書いてたった今検索してみたウイキペディアによると、2010年ノーベル文学賞受賞者なんですね(ペルー国籍のノーベル賞受賞は初)。ペルー大統領選に立候補していたとか、何にも知らずに読んでるハクダイは、とんだズッコケ野郎なのでした。ちなみに、実際に読んだ本は1981年刊行の新潮・現代世界の文学(第3刷)。15年くらい前に1000円で古本屋購入したものの、ずうっと本棚で眠っていた一冊です。とにかく、今回、日の目を見てよかった・・・ということにしておきましょう(苦笑)。

 以下、ウイキペディアより、作者とこの作品のあらましについての部分を引用。

 1966年、ペルーのアマゾン地域などを舞台に娼婦、原住民、軍、僧院など5つの物語が同時進行するスケールの大きな作品『緑の家(スペイン語版、英語版)』を発表し作家的地位を確立。

 作者のウイキディアはこちら

「ズルさ」のすすめ 佐藤優著を読む

こんばんは 今回は、マンガの話題じゃないです。

いつの頃からだろうか?佐藤優氏が気になる存在になっていたのは。とは言うものの、著作を読むのはこれが2冊目なんですけどね。

副題は「いまを生き抜く極意」とあり、この「いま」の的確な分析に注目したいですね。今だけ、金だけ、自分だけ、の風潮強まっているという論考を何かで目にした覚えがありますが、現実は確かにそのように動いているのだけど、消費行動という逃げ道(下手したら唯一の)があるので、なんとか誤魔化せている、そんな感じかもしれません。

個と集団の均衡を取ることの難しさ、未来に対する射程感の大きな隔たり、確かに世の中生きづらくなっているようです(少なくても個人的にはそう思う)

「増殖する自己愛型人間」という節には考えさせられました。パーソナリティ障害、というモノがあるのですね。「障害」の境界線が微妙なんでしょうけど、他人事では無いように思います。

しかし、章末に参考になる文献というか、おススメの本を紹介していて、これが妙に説得力あります(当たり前ですが)。

辰巳ヨシヒロ追悼シリーズ4「ギャグぎゃぐ大行進」(コミックばく創刊号)

辰巳ヨシヒロのギャグマンガ、と聞くと首をかしげる向きも多いでしょう。確かに、辰巳≒劇画 としても間違ってはいないでしょう。ですが、2003年に青林工藝舎より刊行された『大発掘』の巻末に収録された辰巳氏によるあとがき的な寄稿分「フェイドアウトの作品群」には、次のような一文がある。

もともと私はギャグマンガ家になりたくて、修行に励んでいたのだが、天才手塚治虫に勧められて、ストーリーマンガに転向した経緯がある。貸本で失敗した「劇画」を、さらりと捨てて、ギャグマンガ家に転ぶのも一興のような気もしていた。

この一文の前段で、貸本漫画が壊滅して失業状態となり、週刊誌へ活路を見出すとき、「明」と「暗」の分水嶺、すなわち「ギャグ」と「劇画」の分水嶺に立っていた、と書いています。まあ、要するにマンガ家としてのサバイブを考える場合、ギャグの道も選択肢とにあったという事でしょう。

そして、この『大発掘』あとがきでは、小さなコマではありますが、ギャグタッチの未発表作(81年頃か?)として7ページの小品を、本文の上部に、欄外図版的に、掲載しています。

 さて、この「ギャグぎゃぐ大行進」ですが、全20ページです。

●PART1「パチンコ命」として、1ページモノが5本、4ページモノが1本、トビラを入れて全10p。

●PART2「すもう大好き」として、1ページモノが9本、トビラを入れて全10p。

 全作品、いわゆる、同じコマの大きさで描かれる4コマ漫画ないしは8コマ漫画という体裁では無く、サイズや縦横比は、一般的なストーリーマンガに近い「コマ割り」になっています。

辰巳ギャグぎゃぐ (1)辰巳ギャグぎゃぐ (3)

 

辰巳ギャグぎゃぐ (2)

 これが辰巳作品?と違和感を感じる方も少なくないのかもしれませんが、フツウに面白いかと思います。芳文社さんから出てる四コママンガ系雑誌などと相性がいいかも。でも、もう30年も前の事だから、状況が全然違いますね(苦笑)。

 しかし、コマはこびの上手さが際立ちますね。1ページ1話という短さだと、余計強調される感じです。