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GW青虫訪問記「影26集(号)・山森ススムの似顔絵入選発表」を発見。

昨日5月2日(土)、ほぼ1年ぶりに青虫へ行ってきました。館長の高野さんとも1年ぶりの顔合わせとなりましたが、温かく迎えていただきました。

ハクダイが滞在していたほんの数時間の間にも、観光で只見町を訪れていた数名の方々が入館されていて、懐かしい雰囲気を味わっておられました。この雰囲気は、都市部で育った若い方には異世界でしょう。木造の建物をスリッパ履きで歩くというのは、近年はなかなか体験できるものではないでしょうしね。

あれこれ取り出して眺めていたら面白いページを見つけました。日の丸文庫の『影』26集(号)に、「山森先生の似顔絵入選発表」というコーナーがありました。似顔絵コーナーの類いというのは今でも存在するのでしょうか?マンガのキャラクターの似顔絵コンテストは、ハクダイが10代だった1970年代には確実に存在しましたが、最近はどうなんでしょう?全く廃れているかもしれませんねえ(あいにく、まだ確認していない)。

このコーナーは、北王路竜之介などの「山森ススム作品」のキャラクターの似顔絵を募集し、入選佳作を山森先生が選ぶという趣向。1位~3位までの入選と、30数作の佳作作品がそれぞれ掲載されていて、このコンテストに対する関心の高さが伺えます。第3回の似顔絵コンテストとのことですが、1、2回目の作家さんがどなただったのか気になります。何回目まで続いたのでしょうか。

ちなみに、この『影』26集(号)は、昭和33年(1958年)の暮れ頃の刊行と推測されます。

「劇画」を検証する。「続・少年マンガのスタイルの変遷」米沢嘉博を引用しつつ(その1)

しかしながら、「劇画」というコトバも、もう既に死語になりつつあるように思う。20代、10代の人たちに実際に 聞いて見た事はないので、なんとなくでしかないが。

ストーリーマンガの成立を1950年頃として、1950~2015年の65年間。劇画というコトバが一般的になったのが1970年とすると、70年を境に20年と45年に分けら れる訳だ、単純に考えて。

別冊太陽 子どもの昭和史 小年マンガの世界Ⅱ 昭和35年→64年 構成米沢嘉博・1996』所収の「続・少年 マンガのスタイルの変遷」という米沢さんの一文が、劇画なるものが浸透していく様をわかりやすく書いて いるので、以下、米沢さんの文より「引用」しながら(及び一部省略・要約)「劇画」についてあらためて考えてみます。、論調を変えず一部文章を変更しております事あらかじめご了解下さい)。

劇画が貸本マンガより一般のマンガ雑誌へ移り、急激に認知度を高めて行く様子が分かり易く説明されています。

(1)貸本劇画が少年マンガ誌になだれ込んでくるのは昭和40~42年(1965~1967年)
*それ以前にも貸本の世界から雑誌へ登場していた作家としては、

①極めて限定的な発表ではあったが、昭和34年頃の  さいとう・たかを、辰巳ヨシヒロ、つげ義春、がいた。

②早い時期に雑誌に移ってきた例としては、白土三平(サスケの雑誌少年での連載など)、川崎のぼる、がある。

(2)本格的な「劇画」として雑誌に登場するのは、貸本界が衰退し、月刊誌が危うくなり、週刊誌が急成長 を始める昭和40年(1965年)。

(3)水木しげると楳図かずおがこの年(昭和40年)、少年雑誌にデビュー。劇画調のリアルな描 写は怪奇物と相性が良かった。

(4)実写物(映画やドラマ)のマンガ化にあたっても、より実写らしくという意図を背景に、よりリアルな絵 柄の作家たちが起用されていく。

(5)子どもたちは成長するにつれ、、単純な記号的な絵より、線が多く、情報 量も多い絵柄を好むようになってくる。昭和40年は、時代の変化とともに読者の成長期とも重なっていたことが、劇画を一躍主役へ押し上げていく。

(6)昭和40~44年(1965~1969年)、まだ少年マンガ的なものと劇画は混在していた。記号的に整理され、大量生産 システムへの道を歩み始めていたマンガは、劇画勢力に対し、線の数を増やし、背景を描き込み、キャラ クターを大人っぽくするという方法で時代を生き延びようとする。

(7)生き延びた従来のマンガ家の系譜の代表格が、石森章太郎、つのだじろう、桑田次郎ら。マンガに劇画的なテクニックの一部を取り入れながら変化さ せていく。

(8)このドラスチックな変化の中、旧世代の描き手たちは多くが脱落していく。

以上 引用と要約終わり。ここで、見落としてならないのは、このドラスチックな変化は、短期間(2年から3年間程度)に起こったということだろう。旧世代の脱落は、あっという間という感じだったのではなかろうか?劇画というコトバが、社会に定着する速度より、実際に劇画で使われて来た技法が従来のマンガに定着していく速度の方が速かったと思うのである。

次回も、この米沢さんの一文を引用紹介したい。

管理人ハクダイより皆様へ

こんにちは。ハクダイです。
「ハクダイのカカク」のリニューアルがようやく終わりました。2004年に「辰巳ヨシヒロの世界」などを中心にマンガ研究収集サイトとして立ち上げ、2005年には、佐藤まさあきの世界を追加、その後、他の内容をスリムにしたり追加したりと、改編を続けながら、なんとかかんとか続けてきました(その間ほぼ放置状態の期間もありましたが)。

情勢の変化に合わせ、辰巳ヨシヒロ、佐藤まさあきのページの内容を大きく改めねばと2009年頃からリニューアルを構想していたのですが遅々として進まず。その間、ミクシイやFacabookなどSNS、そしてツイッターの普及、と世の中は大きく動いていました。 

2012年頃、やっとリニューアルに向けて本格的に資料集めに入りました。どうせなら劇画工房の名の元に集った8名を網羅的に紹介した方が、各人の実績や個性が際立つのでは?という安直な発想のもとに、8名の作家を対象としてリニューアルすることに決めました。一介のマンガ収集家の自分にとって、これは、かなりキツイ、負担の大きな作業でした。また、Web構築という作業が予想以上にハードルが高く作業は難航を極めました。

ですが、2013年には、山森ススム先生のご家族の方から連絡をいただいたのをきっかけに山森ススム先生にお会いする事が出来たりと、まさに牛歩ではありましたが、前へ進んでおりました。

2014年に入ってからは最中小豆氏の助力を得る事が出来、Webデザインを始め大小様々な有益なアドバイスの元、作業速度が大きくアップしました。

そんなこんなで、やっとリニューアルに漕ぎ着けたというのが実情です。準備から3年でこの程度かよ?と思われる方も少なくないかもしれませんが、今のハクダイにはこれが精一杯です。

マンガファンの皆様にとって少しでも有益な内容になっているならば、これ以上の喜びはありません。 

●当サイト作成にあたり、多くの画像を引用・使用させていただきました。引用の範囲内と勝手に解釈させていただきましたが、問題があるようでしたらご連絡をいただけますようお願いします。善処いたします。

●たくさんの先行する著作等を参考資料として引用・使用させていただきました。それら参考資料については、機会をみて資料一覧として提示する予定です。

●オリジナルの貸本マンガなど、貴重な作品や資料については、昭和漫画館「青虫」さんのご協力をいただきました。館長の高野様には、改めてお礼を申し上げます。当サイトの管理人ハクダイは福島県出身~在住でして、同じ福島県内にある「青虫」さんには格別の思い入れがあります(同じ県内ですが、結構遠いです)。

謀略の街/長谷邦夫/若木書房

 

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表紙です。長谷さんではない方が描いているかと思われます。
ハードカバー、A5判 96ページ。若木書房の探偵漫画シリーズの33となります。
 作品中、制作年月と思われる年月(一部、年月日)が何箇所か記載されていまして、それらによると1957年の2月から3月に制作された作品のようです。この若木の探偵漫画シリーズは、つげ作品、石塚不二太郎作品が入っていたりと、コレクターにとっては広く知られた存在ですね。このシリーズは何番まであるでしょうか?ハクダイ所有は、この33番、1冊ですが(残念)。実際はカバーがあったんでしょうが、カバー無しだし、特に最初の方のカラーページなんてヤブレ、欠損が多くて悲しいですが、読む分には関係ないや……。

 アメリカから帰国した物理学者の鈴木鉄太郎青年は、サイクロ博士から託された手紙を、恩師の不二田先生へ渡すべく、西海村へ向かう。西海村は鉄太郎青年の生まれ育った町であり、原子力研究所が、まさに建設されている真っ最中であった。サイクロ博士が成し遂げた革命的な発明”原子力エンジン”を巡って○国のスパイが暗躍しているらしい。
  怪しげな預言者・八田利(ハタリ)、悪徳代議士も絡み、事件は複雑な様相を見せるが、鉄太郎の弟の中学生正太郎の活躍もあり、事件は解決する。

 当時の最先端技術である「原子力エネルギー」が作品の雰囲気作りに効果的に使用されていると思います。

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火ノ丸相撲 1巻/川田/集英社ジャンプコミックス

80代の老父の唯一の楽しみとさえ言える、大相撲のテレビ中継。老父に付き合って時間が合えば一緒に見るようにしていたら、相撲の面白さを思い出しましたよ、30年ぶりくらいに……。ということで、ジャンプ連載で、このマンガ、レンタルしてきました。

まあ、ウイキペデキィアを見れば詳細な作品紹介があるので、ここでわざわざ書くことは殆どないですけどね。

 まず、タイトルがうまいですえ、日の丸、と間違えそうですが、二重の意味で巧みなネーミングかもしれません。小兵の高校生主人公が無差別級格闘技である相撲に挑むという、熱血モノとしての王道を抑えつつ、いわゆる、暴力的な”不良”と、気弱だけど相撲が大好きという気弱な少年を”仲間”として登場させるなど、憎いくらいに読ませる要素がてんこ盛りです。作者の”川田”さんという苗字?だけ?の筆名は、このたび初めて知りましたが、それなりのキャリアがあるんでしょうね。

 2014年の今にあって、相撲マンガを企画するなら?自分的には勝手に妄想的に考えているアイデアがあったのですが、このマンガのようなアイデアには、ほど遠いものでした。さすがプロだわ……こういうマンガを企画するんだから。

“不良”の描写とかは、いかにもマンガ的ですが、相撲の面白さを再発見するには恰好の作品になっているでしょう。