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ハイスピード/HIGH SPEED 創刊号 三洋社 昭和36年/1961年

 ハイスピード/HIGH SPEED 創刊号 三洋社 昭和36年/1961年

 

※掲載内容は次のとおり。

・ライフルガンのすべて(第一回) 佐藤まさあき 8p 写真と文章による銃の解説

・仇/かたき 白土三平 30p

・みんな消えてゆく 辰巳ヨシヒロ 36p

・身変わりは君に 山森ススム 30p 扉に劇画工房と記載あり(劇画工房マークあり)

・ハンター 佐藤まさあき 41p

・表紙:さいとう・たかを、目次ページのカット:辰巳ヨシヒロ

・さいとう・たかを、辰巳ヨシヒロの二人がそれぞれ1p分、創刊号祝(的な)寄稿を寄せている。

※気になるところなど

・佐藤まさあきによるライフル銃の紹介(解説)のページが幾分唐突な気もしますが、これはこれで有りかもしれません。それだけ、銃に対する関心が大きかったということでしょうし、貸本漫画の商品としての完成度を考えるなら当然かもしれません。

・大阪より劇画を標榜して東京へ出てきた劇画工房の面々より幾分年上で、東京の作家である白土三平。中央(東京)への敵対意識と憧憬がない交ぜとなった複雑な心情を抱えていたと(思われる)劇画工房の面々と、彼らより幾分年上で生活のためという側面はあったでしょうが、明確に描きたいテーマがあり、自分の描く作品の呼称への興味は薄かった(と思われる)白土三平。まさに白土三平 VS 劇画工房 の図式で読み解きたくなってしまいますね。

・山森ススムが昭和36年にあっても劇画工房を名乗っていたという事も興味深い点です。

※以下各作品の紹介です。

●ライフルガンのすべて(第一回) 佐藤まさあき 8p 写真と文章による銃の解説

 ライフル銃の写真は、佐藤まさあきの著作等より推測するに、海外の雑誌などに掲載された写真よりの転用(転載)と思われます。無断転載の可能性が少なからずありますが、解説記事・紹介記事としての水準は結構高く、数多くのテーマを自ら開拓した佐藤まさあきのマーケッター、プランナーとしての才能を垣間見る事ができるものになっています。

●仇/かたき 白土三平 30p

 いわゆる西部劇映画からの派生としての劇画/漫画作品と言えるでしょう。妻子を惨たらしく殺された男は復讐だけを人生の目的として生きてきた。15年の年月を経て復讐〜仇討ちの機会を得た男であったが・・・・。男にとっては過酷な運命が待っていた。

 人間の生きる意味とは何?と思わせる一篇に仕上がっています。白土作品については、多くの情報が流通しているでしょうから、あえてここで何かを書くまでもないと思いますが・・・。

●みんな消えてゆく 辰巳ヨシヒロ

 銀行強盗で六千万の大金を手にした三人の男たちは、奥深い山奥まで逃げ込む。三人の男たちは他の三人の仲間を裏切り〜殺害しており、各自の分け前(取り分)が増えて良かったとさえ思っていた。三人の息子を持つ一癖ありそうな初老の女性「キヌばばあ」の家に身を寄せる(厄介になる)ことを許された三人であったが、結局二人が次々と死んで行き、残るのはボス格の男一人になってしまう。二人の死には、キムばばあの息子たちが関与していることに気付いたボス格の男は、『あの金は魔物だ、あの金を持つと人を殺したくなるぞ』と、キヌばばあに、訴えるのだが・・・。

 登場人物全員が曲者というか悪人的なフンイキを漂わせていて、不気味なというか、悪趣味なテイストに満ちた作品です。日本、土着的なフンイキが濃厚ですが、埋葬シーンでは十字架の墓標が描かれたりと、無国籍なフンイキも少なからずあります。

●身変わりは君に 山森ススム 30p

 ある夜、友人と別れて一人帰路につく男は、ナイフを持った男による凶行(おそらく殺人)の現場を偶然目にする。あわてて、住んでいるアパート三洋壮まで逃げ帰るが、ナイフを持った男に住んでいる場所を知られてしまったようだ。アパートに友人と一緒に住んでいる男であったが、とにかくアパートを出るのが先決と考えて、さっそく引っ越しを始めようとする男だったが・・・。

 身近に住んでいる人間が、もし〇〇〇だったら・・・。日常生活の危うさ、何気ない日常に潜む恐怖への強い関心。作者山森ススムの創作の原点には、そのようなモノが存在していたと想像します。多かれ少なかれ、そのような感覚を多くの人が持つのでしょうか、飛びぬけて強い関心だったと思われます。

●ハンター 佐藤まさあき 41p

 売れない漫画家(劇画家)である安田。安田の学校時代の友人である鮫島は、社長の息子であり、自動車を乗り回し、高額なライフル銃を持ち、面白おかしく暮らしている。学校時代は安田と鮫島はライバル関係にあったが、安田の父の死後は途端に貧乏になってしまった安田であった。安田が想いを寄せる女性マリちゃんと鮫島が親しくしているという噂を聞いた安田は、ある目的のために、鮫島にバカにされながらも最低価格のライフル銃をやっとの思いで購入する。鮫島と一緒に狩猟に出かけた安田であったが、恐ろしい、秘めたる目的を持っていた。安田は何をしようとしているのか、

 ”敗北者”となった男がプライドを取り戻すべく、あがきもがき復讐の鬼と化す、佐藤まさあきの得意とするテーマの作品です。ですが、熱気というか怨念というか、作者の作品への思いが希薄なような気がしてなりません。酷な言い方ですが、アシスタントの習作なんではないだろうか?そんな疑念さえ浮かびます。


 

山森ススム先生の蔵書をお借りして拝読


22022.4.28アップ。