カテゴリー別アーカイブ: ハクダイのブログ

デイヴィッド・ホックニー版画展を見る

地元いわき市立美術館で開催の標記展に行って来ました。2017.7.9(日)。会期は6.10~7.17

恥ずかしい話、このアーティストさんの名前は知らなかったです(苦笑)。英国生まれでアメリカを拠点に移して長く活躍、とざっくりまとめてしまいますが、1960年代以降、その影響を受けた日本のアーティストも数知れないのでしょう。日本のアーティストには、当然、マンガ家と呼ばれる事が多い人たちも含まれるかと思います。

 国内最大のホックニー版画コレクションを誇る東京現代美術館の所蔵品が中心の展示でした。(1960年代から近年までの約140点)。

美術なり美術史を体系的に学ぶ機会を持ちたいと常々思っているのですが、なかなか思うようにいきません。

デヴィットホックニー展 (1)-1024

デヴィットホックニー展 (2)-1024

2017.7.23記す

シリーズ・松本正彦2016~その4 『鐘鳴れば人が死ぬ』 松本正彦&桜井昌一の共作

『鐘鳴れば人が死ぬ』セントラル文庫 松本正彦&桜井昌一の共作

だいぶ前から、その存在自体は確認できていたのですが、読む機会が無かった本作品、先月2017年6月下旬に昭和漫画館青虫さんを訪問した際、やっと読むことができました。

既に旧聞に属することでありますが、昨年2016年、「ハクダイのカカク」管理人・ハクダイは、故・松本正彦さんの御長男である松本知彦さんに2度ほど御会いする機会に恵まれました。2016年には「松本正彦・知彦・親子展」、「松本正彦・切り絵展」が開催され、「アーテイスト・松本正彦」の業績を振り返るにふさわしい年だったと思います。不定期ではありますが、松本正彦関連の話題をシリーズとして綴っていきたいと思います(2017・6・13)。

1.単行本表紙と前書き相当部分

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (3) 松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (6)

 二人の作家が一つの作品を共同で仕上げる、このようなマンガ制作スタイルがどれほど一般的であるのか?共同制作の定義からして難しいのですが、その問題はさて置きまして、この作品の構成は次のようになっています。

 冒頭と終盤部分を共同で制作(同一ページ内に二人の筆致が混在)、全体の約半分(前)を松本さん単独で描き、後半を桜井さんが描く。

 松本制作部分、桜井製作部分の両者間の、作劇上の関係性、ストーリー展開上の必然性はあまり濃くない(どちらかと言えば希薄でしょう)。共作部分の最終盤にて、両者の描くキャラクターが不幸なカタチで出会うのですが、この演出を劇的とみるか?行き当たりバッタリ?と見るか意見の分かれるところでしょう。

2.松本担当部分の概要

 死んだ妻の姉の家に居候している男とその娘(父娘)。父娘に対する姉の態度・行為はキツク、冷たいもので父娘は肩を寄せ合うようにひっそりと暮らしている。難な経済状況の中、父は娘を学費の高い音楽学校へ通わせている。経済的な困難と姉の非情さが、温厚・善良な父を追い込み、いつの間にか父は犯罪に手を染めていってしまう。

 善良な中年男が、あっさりと殺人に身を委ねるまでになってしまう様を淡々と描写する。父はゆっくりと狂っていっているのかもしれない。もし自分が、この父の立場だとしたら、同じようにゆっくりと変調をきたしていくのではないか?そんな恐怖に捕らわれる、リアリティー度の高い内容かと思います。。

3.桜井担当部分の概要

 世間から虐げられて育った少年・幸田仁。自らが意図しないカタチであったが、二人の人間の死(事故死とされたが)に関わった少年・幸田は、やがて社会へ出て働くようになった。鐘の音が聞こえた時に殺人が起こる、という奇妙な事実に思い至った幸田仁は自分の生まれた故郷の教会で、自らの不幸な出自の秘密にたどり着く。鐘の音と殺人に関連性はあるのだろうか?

 妄想と客観的事実に曖昧なところがありますが(作劇上、大事なポイントですが)、桜井氏らしいミステリーとなっています。幾分脱力系?と解釈されることも、まま在るでしょう。下書きとなる、あるいはインスパイアされた海外のミステリー小説の桜井氏なりのマンガによる再構築なのかもしれません。

4.ページ割り詳細

全体のページ割り、制作担当については以下のようになると推測。下記数字は各ページ印刷のノンブル(ページナンバー)です

・2~5:冒頭:松本&桜井の共作

・6~7:見開きの扉部分、松本&桜井の共作。タイトルの描き文字は松本と推測

・8~81:松本単独

・82~154:桜井単独

・155~159:松本&桜井の共作

5.実際のページを幾つか紹介

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (7)-1024

 ↑作品冒頭のカラーページより。共作部分。

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (9)-1024

 ↑見開きトビラ部分。共作だろう。タイトルの描き文字は松本だろう。

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (16)-1024 松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (17)-1024

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (18)-1024

↑物語終盤部分の共作部分(3枚)。

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (13)-1024

↑松本さん単独部分。

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (15)-1024

↑桜井さん単独部分

6.その他興味深い点

(1)制作年は?

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (10)-1024 

 制作年が1960年と考えられる、奥付日付は無いのだが、松本正彦氏は作品中に制作年月をクレジットすることが多く、1960年制作と推測できる描き込みがある。また、劇画工房脱退後に使っていた『劇画ファストプロ』(ファーストとする場合もあるようだ)のマークが確認できる。

(2)浮浪者らしき男が歌う歌。

 作品冒頭のカラーページに登場する浮浪者のような男が作品最終盤にも登場し、冒頭と同じ歌(と思われる)を歌います。

歌詞を引用しますと(カッコ内はページ)
・冒頭:

 月影は夢路をてらして(2P)  歓びは果てしもなし(3P) 

 なごりの夢 朝日に消えて(8P)

・最終盤:

 月影は夢路をてらして(155P) なごりの夢 朝日に消えて(158P)

 一人帰る さみしさよ(159p)

 興味深いのは、これらが松本・桜井の共作ページにあり、全て松本の手によるコマだということです。なかなかに凝った演出と言えるでしょう。また、この歌自体が、実際に存在したモノなのか松本正彦のオリジナル曲(歌詞)なのかは不明です(判断出来ない)。

(3)巻末の広告

 劇画全集・・・商業的な必要性に駆られてのシリーズ名かと思いますが、劇画という言葉が業界に定着するまでの期間が極めて短かったと言う証左と言えるかもしれません。組織としての劇画工房の存続期間には諸説ありますが、1959年(昭和34)のほぼ1年としても、翌年1960年には違和感なく業界で通用していたのだと思います。また、この作品は、当初の目論見としては劇画全集6集として、松本正彦単独作「誰が殺した」として企画された可能性もあるでしょう。

松本&桜井_鐘が鳴れば人が死ぬ (1)

2017.7.10記す

2017年1回目の青虫訪問

昨年2016年10月末以来の昭和漫画館青虫さん訪問。

サイトの充実を考えるのですがなかなか思うように進みません・・・いつものことですが。6月の下旬、5月の営業日再開から、早や二か月を過ぎようとしている時期にやっとおじゃますることが出来ました。

新潟でのマンガ学会開催直後を受けて、その足で青虫を訪問されたマンガ研究者さんたちが数名熱心に資料にあたっている最中の午前十時ころから午後三時までの途中昼食休憩をはさんでの約4~5時間の滞在でしたが、昨年には蔵書していなかった(と思われる)1970年代の雑誌群~創刊号多し~非:少年誌(成人向け少なくない印象)、などなど、漫画好きにはタマラナイ時間を過ごせました。

 まあ、この雑誌群の存在に気付いたの退館間際の時間でして、劇画工房存続時期の貸本マンガを中心に、あれこれ見ていた時間が長かったのですが。

トップの写真は青虫のある只見町の風景です。青虫へ向かう途中に撮影しました。もう少し写真の技術を磨きたいですね(苦笑)

2017.7.8記す。

 

蔵書棚より 伊賀淫花忍法帳 石川賢 別冊エースファイブコミックス

石川賢とダイナミック・プロ が正しいですね。消費税導入前ですから1980年代の刊行かと推測します。(奥付には年月日の記載なし)。B6判サイズで、表紙違いが存在するかもしれませんね。

古本流れを偶々入手して本棚に入れてあったのですが、事情があって手放すことになりまして(嫌々では無い・苦笑)遅ればせながら読んでみました。

表題作の他に「伊賀清水港」の2編を収録。両作ともスケベでおバカなマンガです(サイコウの誉め言葉)。パロディとしてもの性格も多分に持っているのですが、自分の分かる元ネタがとっても少ない(多分)のが残念です。

しかし、このコミックシリーズは侮れませんね。まあ、全貌が明らかになっているのでしょうが(たぶん)、ビンテージコミックコレクター泣かせの部類に入るシリーズかもしれません。

石川賢伊賀淫花忍法帳 (2)-1024

石川賢伊賀淫花忍法帳 (1)-1024石川賢伊賀淫花忍法帳 (3)-1024

 

2017.6.26記す。

シリーズ・松本正彦2016~その3 『人形紳士』1955年(昭和30)を読む

「人形紳士」松本正彦 を読む。

電子書籍サイトの ebookjapan ←クリック で松本正彦作品を読むことが可能です。松本正彦で検索しますと、24件ほどヒットします ⇒ クリック

 この『人形紳士』冒頭の14ページを立ち読みできるので、是非立ち読みだけでもして頂きたいです。(勿論課金して全て読んでも納得の作品ですが)。

既に旧聞に属することでありますが、昨年2016年、「ハクダイのカカク」管理人・ハクダイは、故・松本正彦さんの御長男である松本知彦さんに2度ほど御会いする機会に恵まれました。2016年には「松本正彦・知彦・親子展」、「松本正彦・切り絵展」が開催され、「アーテイスト・松本正彦」の業績を振り返るにふさわしい年だったと思います。不定期ではありますが、松本正彦関連の話題をシリーズとして綴っていきたいと思います(2017・6・13)。

 あらすじと見どころなどをハクダイなりにまとめてみましたので参考にして頂ければ幸いです。ebookjapanの該当作のあらすじはこちら ⇒ クリック

 また、小学館クリエイティブより刊行の松本正彦「駒画」作品集・隣室の男収録の作品リストにも、マンガコレクター上村誘さんによる数百字程度の解説が収められています。尚、このページのアイキャッチ画像は、この作品集・隣室の男の表紙です。

あらすじ 映画館から出てきた少年・三平と、その、おじ泰三は、客寄せのために飾られたショーウインドウの中にある電気人形の前を通りかかる。本物の電気人形なのか?人間が扮装しているのか?判断出来ない二人の目の前で、ショーウインドウの中の電気人形が銃声と共に倒れる。そして、狙撃者と思われる男の姿が現われる。狙撃者らしき男を追う三平と鍛冶川であったが、見失ってしまう。

 三平は、詰襟の学生服らしき服を着ており、高校生くらいの年齢と思われる。おじの鍛冶川は私立探偵という設定かと思われる。血縁関係のある叔父・伯父なのか、知人の大人への敬称としての「おじ」なのかは判断できず。

 狙撃者らしき男が落としていったと思われる名刺には「曽我五郎」の名が。三平の友人の少女・チヨコの父「曽我十郎」氏の弟が「曽我五郎」であり、曽我五郎氏は「電子ロボットを製作中」として話題の人物であった。

 曽我五郎氏が、顔が薬品で誰か判別できない状態で、死んでいるのが発見される。チヨコが語るところによれば、父・曽我十郎は行方不明、父・十郎は、弟五郎と仲が悪かった。そして、不仲の原因は、十郎が弟・五郎の研究に反対していたせいらしい。

 曽我五郎氏は、人間を超えた存在としての「ロボット」を製作しようとしていたようだ。そして、「人形紳士」を名乗る謎の人物(ロボットないしは怪人か)による破壊事件、美術品の窃盗事件などが立て続けに起こる。不敵にも美術品の盗難予告をしてくるという大胆な人形紳士。

 名探偵・鍛冶川との知恵比べの末、ついに人形紳士の正体が明らかになる。行方不明の曽我十郎氏の安否~生死の行方はいかに? そして、十郎氏こそが人形紳士なのか?それとも人形紳士は、やはりロボットなのだろうか?

興味深い点など

・結末が、ハッピーエンドとは言い難いモノで、ある種の無常観を感じさせる。
・スリラーかミステリーか?、これは断然後者であると思う。漫画を読んでいるいう感覚もあるのだが、活字を追っているような感覚も多分に感じさせる。

・人物の等身サイズは5~6投身と言ってよいと思う。下半身を極端に太く描くデフォルメは、松本正彦独自のモノと言えるかもしれない。
・江戸川乱歩作品の影響か?怪人二十面相作品に似たようなトリックがあったように思います。アドバルーンを使った逃走トリック、窃盗ターゲットの美術品のすり替えトリック、変装トリックなどです。

・死体発見のシーンで「博士の死体は、あまりにひどいのでとても絵に描けません」とテキスト情報のみのコマがあります。ユーモアなのか?、素直に暴力シーンを避けたいのか?著者の真意は分かりませんが、作品世界へのリアリティー付加という点では効果的な演出になっていると思います。また、前述の上村誘さんの解説でも、この場面を取り上げております。

・窃盗の予告時刻が来る時間経過のカッチカッチの描写が、かなりのコマ数を使用していて、ページ数が多く使える単行本ならでは、と強く感じる。

・21、22p。曽我五郎が作ろうと構想している「ロボット」の性質が興味深い。著者は、手塚治虫作品をはじめとして、SF作品にも大きな関心を寄せていたように想像します。

・ユーモア、ギャグのシーンが皆無。まあ、作者がユーモアを意図している部分もあるのかもしれませんが。

・作品冒頭・トビラ部分に「1955.11」と製作年月らしき署名あり。

・発見された死体の顔が酷い状態で身元が特定出来ない、という点がストーリー展開上、大きなポイントですが、身元認証(確認)の技術があまり進歩していない時代ならではのものでしょう。現行では通用しない作劇上の工夫でしょう。

2017.6.17記す。