カテゴリー別アーカイブ: ハクダイのブログ

虹色四間を読む機会に恵まれました

ヘボですが将棋好きなハクダイが長年読みたかった、つのだじろう の本作品、念願叶い全編を読む機会に恵まれました。(画像は5五の龍単行本1巻)

将棋を扱った漫画は数多くありますが、実際の将棋界から多くを取材し、プロを目指す若者たちの青春群像劇としても優れ、将棋用学習テキストとしても通用する、と言う点で、将棋マンガの代表作の一つに挙げられる「5五の龍」の後日譚、続編、ないしはスピンアウト作品に相当するのが、この「虹色四間」です。

ウイキペディア「5五の龍」の項にて、この作品については、多くの情報が記載されています。⇒ リンク

とは言うものの、漫画作品としてのクオリティは残念ながら、お世辞も高いとは言い難い(かもしれない・・・苦笑)。つのだじろう作品は、アシスタントさんが描いている感が強い、というのは、ある意味常識?ですが、本作品も御多分に漏れずというか、よりその傾向が強いかもしれません。

色んな事情で仕方のないことかもしれませんが、「近代将棋」1997年5月号〜1998年8月号 に連載という事も影響しているでしょう。ちなみに「5五の龍」の連載は1978年から1980年。主人公の女子高校生が、各種の四間飛車を巧みに差し回すという趣向は、将棋の学習用テキスト(いわゆる棋書)としての実用性を重視した結果と考えることもできます。虹色四間として、赤、橙、黄、黄緑、緑、青、紫、の7つの四間飛車戦法を紹介しており、棋書の実用性と娯楽作品としてのギミック(仕掛け、工夫)を微妙にバランスさせているのは、巨匠つのだじろうだからこそ出来た事とも言えるでしょう。主人公の紺野 水城(こんの みずき)のライバルたちが七人で、彼女たち七人の名前が七色から取られている点も、オモシロいといえばオモシロいですが、戦法にだけフォーカスした方が良かったかもしれませんね。

本編「5五の龍」、そしてこの「虹色四間」、設定時代は、それぞれの発表時期そのままに令和の今だからこそ、他のマンガ家さんがリメイクしたら面白い作品になるかもしれませんね。ちなみに「虹色四間」の紺野 水城(こんの みずき)は、連載当時のいわゆるコギャル的(に近い)造形かと思います。

2025.4.6アップ。

映画:堕靡泥の星 美少女狩り

 佐藤まさあきの代表作の一つである「堕靡泥の星」は、 にっかつ にて映画化されている。DVDパッケージも流通していたのだが入手するタイミングを逸してしまい、なかなか見る機会が無かった。2025年に入ってから、amazonプライムで見れることが分かり、今更ながら鑑賞してみました。

映画.com の該当ページ → https://eiga.com/movie/68841/

上記サイト記載の基本情報は次のとおり。

1979年製作/100分/日本  配給:にっかつ
劇場公開日:1979年10月27日

また、上記サイトには二件のレビューが投稿されております。どちらも映画というメディアに疎いハクダイとは大違いの、興味深い感想、的確な情報整理を提示しております。佐藤まさあきという作家理解のためにも、是非一読をお勧めします。

ついでにamazonのDVD販売のレビューもリンクを貼っておきます

https://www.amazon.co.jp/dp/B00CWXZC92

 ハクダイなりの感想。映画という表現メディアには、あまり思い入れが無く、そして「ポルノグラフィ映画」の鑑賞体験(鑑賞総時間)は、圧倒的に少ない(多分)です。

 1979年、昭和54年の公開ですが、2025年、令和7年の現在の方が、原作に忠実な映像化がしやすいように思いますね。これは、あくまでも突き抜けた作品でも、それなりのマーケットがあれば商業作品として流通させ易い時代になった、という意味ですが・・・。けっきょくのところ、ある程度の利益が見込めなければ、製作できない事には変わりないのですが。

 公開の1979年から40年以上を経た今となっては、マンガ家佐藤まさあきの名を知る者は少ない。しかしながら、ピカレスクロマンものの系譜にあっては、重要作品であることは間違いと言えるだろう。世代を超えて読み継がれる事の困難さという事になるのだろう。

 いわゆる悪漢小説、ピカレスクロマン、近年でいえばダークヒーローものでしょうか? 一定の需要があるのでしょうが、そういった作品が主流になり得る時代というのは、社会全体が過渡的な状態にあるものなのかもしれません。

2025.3.11 1アップロード

 

 

最近読んだ本 文明開化めし(上下)ラズウエル細木 リイド社

コミック乱ツインズ/リイド社 2018~2021年連載。ほぼ月1で通っている近くの散髪屋さんで、何回かは読んでいたのですが、漫画収集家(愛好家?)のNさん(@関西)の御好意で上下2巻を読む機会に恵まれました。Nさんありがとうございます、嬉しいです。

 そんなにタクサンは読めていませんが、ラズウエル細木さん、好きな作家さんです。

かわら版~新聞へ、記者として料理を紹介するという読切形式ですが、ラズウエルさんの手に掛かれば、人々の日常の営みがリアルに伝わってくる、時間と空間が濃く深く伝わってきて、心揺さぶられます。

 

 

文明開化めし上下2冊 書影

 

主人公三吉始め、その雇い主や同僚なども、生き生きと描かれるのですが、あくまで内容の中心は料理。三吉らの人間模様はあっさりとしか描かれていないのが残念といえば残念で、外伝的に人間模様に焦点を当てたモノも読みたいですねえ。

 2025.1.4公開

 

でっかい奴 福本和也/佐藤まさあき を読む

 2024年、旧知の昭和マンガ愛好家Kさん(関西在住)の御好意により、でっかい奴を読む機会に恵まれました。連載の一部では無く、「完全・全編」ですから、今更ながら信じられない思いですね。

 たまたま入手していた週刊少年マガジンで1回分のみ読んだことがあるのみで(かれこれ20~30年くらい前の記憶ですが)、読む機会は無いだろうなあ、と半ばあきらめていただけにKさんの御好意に感謝の念でいっぱいですね。ちなみに、このマガジンを処分してしまった事を後悔しております(苦笑)。

 佐藤まさあきの二冊の著書にて、記述された情報が、この作品に関する「入手可能な情報」と言っても言い過ぎでは無いかもしれません。

 週刊少年マガジン(講談社) 1967(昭和42)1号(1月1日号)〜30号(7月23日号) 全30回の連載

検索(2024.12.25)すると次のような情報が出てきました

まんだらけの販売商品ページ でっかい奴の私家版

 画像借用させて頂きました⇒ 佐藤まさあき_でっかい奴画像  

松崎あけみのブログ 週刊少年マガジン昭和42年13号を一部紹介

 九州から尊敬するマンガ家・袋三太郎(フクロサンタロウ)を頼って、マンガ家として大成する、というでっかい夢を持って上京してきた大道寺凡太(ダイドウジボンタ)の奮闘を描く青春快作、といったところでしょうか。凡太は、袋三太郎の作品を「子どもたちのために愛情をそそいで描かれた立派な作品」と高く評価し、袋三太郎に心酔しているます。ですが、実際の袋三太郎は「世間的には無名のさえない貧乏マンガ家」です。

 まあ、佐藤まさあき氏本人が「失敗作」と書いているように、作品としては、デタラメというか、作劇としては破綻している?部分が多すぎますが、興味深く読みました。

 袋三太郎が、かつてのマンガ家仲間で、今は多数の連載を抱える大人気作家となった「佐古正」に借金できないか?と訪ねる回では、永島慎二の漫画家残酷物語を思い起こしました。佐藤まさあき自身もどのような気持ちでこの作品を描いていたのでしょうか?

 今や死語となったも言える「劇画」ですが、劇画という言葉がどのように社会に浸透して行ったか?を検証する意味でも、また、佐藤まさあきにとっての「劇画」とは?を考える意味でもなかなかに興味深い作品ですね。

 ・2025.1.2公開

 

摩天楼の全体像に迫る:その2〜

摩天楼/兎月書房の全体像に迫る:その2〜

●各号の見返し部分のまとめ 表紙の裏に相当する見返し部分と見返し遊び部分の2ページ分

 劇画工房同人8人の紹介ページとすることを考えていたようです。シリーズ名は「こんにちわ」。作者の本人写真に紹介文に添えた物となります。下記に紹介文と現物の画像をまとめました。⇒画像はクリックで拡大表示。

 この紹介分の作成は、辰巳ヨシヒロ氏によるものと推測しています(具体的なエビデンスは無いのですが、辰巳氏の著作などを読む限り、そんな気がします)

 

1号:桜井昌一    2号:K・元美津
 探偵漫画界に本間枚九郎(ほんままいくろう)ものでハードボイルド派を紹介されてから、はや3年余りもたちますが、近作は、ますます円熟味(*1)が出てきたようです。先生の今後の作品が楽しみです。

 タフガイ探偵針剣太郎そのものズバリの K・元美津先生です。当年23才。ファクト(真実)フレッシュ(新しさ)フリー(自由、無制約) この3Fが劇画を構成すると先生は語られます。

画像:準備中  matenrou_2 (2) 
3号:欠番 4号:さいとう・たかを  

   石川フミヤスを予定していたか?(推測)  該当部分は白紙状態であり、何らかの編集上のミスがあったと推測

   常に人気トップにあるさいとう・たかを先生はチョッと頭のぬけた探偵台風五郎の生みの親であり、また二十二才の若さあふれる青年作家です。
画像:準備中 (基本白状態)  画像:準備中 
5号:松本正彦 6号:山森ススム
 ぼくは摩天楼に対して、すごくファイトを燃やしているのですよ、とその意欲のほどを語られる、松本先生の、これからの本誌におけるご活躍ぶりが楽しみです。   はたして、この人があの奇抜な、そしておそろしい作品をかかれるのだろうか こんな疑問をいだかせる山森ススム先生です。 
画像:準備中   matenrou6 (2) 
7号:辰巳ヨシヒロ 8号:佐藤まさあき
  本格的、アクション物と広いレパートリーをもち、なお最近はユーモア物にも異彩を放った辰巳先生は、たえず前進しないと気がすまないのだと語られるファイトマン。写真には「愛犬ベルとたわむれる辰巳先生」と一文あり。   スリラー・怪奇・本格もの・・・とあらゆる作品を手がけてこられた先生ですが、最近はハードボイルドの非情な世界にすっかり魅せられてしまった様です。

 matenrou7 (3)

摩天楼8号前半抜粋_001(ハクダイ蔵書scan) 

  参考:摩天楼別冊(B5判)見返し部分/劇画工房全8名 
 摩天楼別冊B5 (1) (8名全員が揃っている写真は、この一枚のみと思われます)

★注意など:(*1):原文は「えんじく味」(明らかな誤記等と思しき部分については修正を施しています) 

 

 ●作成:2024.11.01