影18集 日の丸文庫

◆探偵ブック 影 18集◆

目次は巻頭のさいとう・たかを作品の後にあり、山森作品の前にあります。

『黒い子猫シリーズ X ラメラ さいとう・たかを』 16p

 狂気とも呼べるような執着で研究に打ち込む滑博士(ナメラハクシ)。旧友である北川博士が、莫大な研究をつぎ込んでいる滑博士の身を案じて訪ねてくるが、『この薬が出来たら・・・・」と北川博士の心配も全く意に介さない滑博士であった。研究所で夜を過ごした北川博士は、滑博士の実験室のドアの鍵穴から、身体が溶け出して透明人間となる滑博士の姿を見るが・・・。透明人間を作り出そうとする滑博士の狂気じみた研究の正体とは?「黒い猫」と呼ばれる少年探偵の推理が冴える。

 滑博士と北川博士の友情もテーマとして内包しており、後味は悪くない作品。この当時のさいとう・たかを作品は殆ど知られていないと思いますが、漫画的な丸っこい絵柄と、単純に形容できない、さいとう・たかをらしさが感じられる絵柄だと思います。

● 空飛ぶネオン塔 山森ススム 21p

 一億円以上が奪われ、行員三十余名が殺害されるという、凶悪な銀行強盗事件が発生する。犯人は三人組のギャングであることは分かっており、非常線が張られるが逃走経路がつかめず、市街地は大混乱。偶然、ギャングと遭遇する仁とその友人は、警察に、ギャングの居場所を教えようとするが、居場所を知られたにも拘らずギャングたちは余裕しゃくしゃくの様子である。ギャングたちが利用しようとしている逃走経路(方法)とは?

 ロケットで逃走する、というアイデアを生かし切れておらず、幾分消化不良感が残る作品だが、山森作品の軌跡をたどるという点では興味深い作品。

 

 ● 続まだら蜘蛛 佐藤まさあき 25p ミステリーシリーズ第四話と表紙に記載あり。

 ● おれはギャング⑥桜井昌一 1p 4コマ漫画が2本

 第二次世界大戦中、ビルマのある部隊にいた三人の男たちは、墜落した飛行機の中にあった宝石を偶然手に入れる。まだらの毒蜘蛛に噛まれた遠野を見捨て、更に遠野の分の宝石も奪って逃げてしまう二人の男。16年後、まだら蜘蛛を自称する怪しげな男が、復讐のためにと生き残った二人の前に現れる。

 前回分の謎解き的な感じなのが残念。前回分のまとめは絵物語的な手法を取っているのも興味深い。

 物語自体は、結構込み入っているにもかかわらず、破綻なく進み、復讐モノ、謎解きモノとしてよくできており、ストーリー展開の巧みさに定評があった佐藤まさあきらしい作品。いわゆる書生風スタイルの植村謙二探偵の造形には確かなモノがあります。佐藤まさあきといえば独特の目つきの男(いわゆる三白眼の男)で知られますが、この当時は、まだ、この目つきの男は登場しません。個人的には、まだ丸みが残っていた時代の佐藤まさあきの絵柄好きですね。

● クイズの部屋 消えた五千円札 桜井昌一 下半分のページで16p

 銀行強盗に成功するも逃走中である三人。奥深い山へ逃げ込み一夜を明かすが、仲間割れが起こりそうな気配がする。盗んできた金の一部が無くなっているのに気付いた男は・・・

● 蛇性の魔女 山口よしひろ 30p

 コーヒーを食堂で飲んでいた白百合健一郎は、「蛙を一人前」持って来てと奇妙な注文をするマスク姿の女性を見かける。機転を利かした店員は「当店自慢の牛の舌」を出すが、マスクを取った女性の口には恐ろしい牙が二本。その女は復讐を企む恐るべき「蛇女」であった。事件の全貌と蛇女の正体に迫ろうと精力的に動く白百合健一郎。単純そうな事件に見えたが、真犯人の真意は意外なものだった。

 作者の山口よしひろさんの名前は全く知りませんでしたが、手塚治虫の熱烈なフォロワーと言えるでしょう。手慣れた感じで、それなりに実績のあった方かもしれません。謎解きモノとしては結構複雑な構造を持っており、事件を解決するのは白百合健一郎の妹であったりと、なかなか一筋縄では無い読み応え十分の作品に仕上がってします。劇画工房の作家たちが目指したような「新しいマンガ」志向のようなモノは希薄ですが、完成度は高い作品です。

● 二人の男 有川栄一 上半分のページで16p

 警察に追われている二人の男は実の兄弟。弟は麻薬王になってやると豪語するが、兄は弟には真っ当な道に進んでもらいたい。兄弟は激しく言い争うが・・・。

● 地獄特急 くぼもとみのる 21p 表紙にスリラーとある。

 都内の銀行を襲撃し銀行強盗に成功した二人の男は、羽田空港で小型飛行機を乗っ取り逃亡を企てる。犯人に脅された二人の操縦士の操縦する小型飛行機は三原山に向かう。三原山の火口付近に不時着した小型飛行機であったが、三原山の噴火が数時間後に迫っており、故障したエンジンを直し、三原山を離れなければならない。犯人二人、そして操縦士二人は、この危機を脱することが出来るのか?

 くぼもとみのるは影丸譲也(1940生まれ)の本人名義であるが、劇画家として大成する才能の片りんが伺える初期の一篇と言えるだろう。この当時若十八歳。臨場感に溢れたドラマが展開されるが、犯人二人は3〜4等身で描かれており、自らの表現を模索していた時期であると推測されます。今更ですが、影丸譲也という劇画家・マンガ家の存在の大きさを実感しています。


 

 本書は山森ススム先生よりお借りした貸本漫画の一冊です。


 

2022.4.18アップ。