刑事くずれ

佐藤まさあき 刑事くずれ(芸文コミックス版)を読む


こんばんわ ハクダイです。暑くてどうにもダラケがちです(涙)。ですが、住んでる地域は比較的涼しいので、これで暑い暑い言ったら申し訳ないかもしれません。

きょうは、26日の日曜日に再読してみた佐藤まさあきの刑事くずれ(芸文コミックス)について書いてみます。

昭和48年の発行と奥付にはありますが、作品リストによると別冊漫画アクション(双葉社)に昭和46年(1971年)に発表されたようです(詳細な時期は分かりませんが)。この年は、影男、野望、という代表作を発表していた時期になりますので、雑誌時代の最盛期といって良いかと思います。

主人公は矢吹恭二。刑事であった彼は、一本気な性格ゆえに、犯罪組織の「標的」にされ、愛する妻が組織の送り込んだスパイであった、という悲しくも恐ろしい事実を認めることが出来ず、結局妻を死に追いこんでしまう。刑事を辞した矢吹であったが、生きる希望も目的も失ってしう。刑事として働いていた土地しか彼の行くあては無く、自分なりの正義と倫理感で生きていこうとするのだが、矢吹の意思とは関係なしに、状況は混沌を更に深めていく・・・・。

あとがきで著者佐藤まさあき氏は、この作品について、「地位も、愛も、生きる目的すらも失った男の哀しみを描いてみたいと思ったシリーズ」「私のこれまでの系列のカラを破った大人の味を持ったハードボイルド劇画と自認」と書いています。なのですが、ハクダイとしては、「影男」のもつ虚無と、それほど変らない虚無が描かれているように感じます。体制側の人間~刑事を主人公とした、という点で、佐藤さん自身としては「特異なキャラクター」を作った、と考えているようなところがあるかもしれません。佐藤作品の読者としては、そんなに特異ですかねえ?と疑問符が付く感じですね。

物語の骨格としては、佐藤まさあき作品らしい、アウトサイダーロマンそのものですが「雑な印象」は拭えない作品かと思います。ですが、刑事・矢吹に係わってしまう「二人の哀しい女」の存在が、とても生々しく、佐藤さんの人間観、社会観が、色濃く反映された作品に仕上がっていると思います。女性の視点からの「刑事くずれ・矢吹恭二」・・・・面白いかもしれません。

刑事くずれ

所有分はグラサン紙保護の状態で古本購入したようです。1994.12.10(土)ドン・コミック ¥1,200、と書いたメモ書きが挟まっていました(苦笑)。多分、辰巳先生が会計してくれたかと。この当時、すでにハクダイは、関東には住んでおらず福島県内に住んでいましたので、なにかの用事で上京したおりにドンコミックへ寄ったものと思われます。