影別冊逆戻り (2)

蔵書棚から 影別冊 逆もどり(辰巳)+焼けぼっくりの黒やん(梅本さちお)


貸本マンガ誌影別冊(日の丸文庫)です。辰巳ヨシヒロの「逆もどり(約100ページ)」と梅本さちお「焼けぼっくりの黒やん・40ページ」を収録。定価170円で、奥付自体は在るのですが発行日の記載は無いです。

辰巳さんの作品リストによると「逆もどり」は1962年(昭和37)の作品でして、実際の刊行時期は1962~1963(昭和37~38)と推測されます。また、魔像58集の予告が巻末に掲載されています。

 辰巳作品は、男同士の友情と男女の恋愛をテーマにした、ちょっと皮肉な娯楽読み物的な一作です。

併録の梅本さちお作品が興味深いです。梅本さんが亡くなってから久しいですが、アパッチ野球軍(花登筺原作)、リトルの団ちゃん、という野球モノの傑作、 「とべない翼」(原作:真樹日佐夫)という、不良少年モノ(ちょっと違う?)の傑作を残されています。

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1943(昭和18)生まれ-1993(平成5)年逝去のことですので、昭和37年当時は、まだは十代ということになります。

タイトル通りに「焼けぼっくりの黒やん」なる中年男が主人公なのですが、この男の生業(職業)がユニークです。火事の焼け跡に残る住宅用木材の焼け残り(黒く燃え残る塊)を「スミ屋」へ売りつける、というモノで、作中、作者らしき人物が登場して、所によっては別名「カラケシ屋」とも呼ぶと解説しています。

アウトドア用品として木炭なり煉炭(練炭)の需要は、近年でも、そこそこあるのかもしれませんが、日常的な燃料用途としては珍しい存在となった現在、この「焼けぼっくり屋・カラケシ屋」なる生業が実際に存在したのか?作者梅本さちお氏の創作なのか?残念ながらハクダイには判断出来ません(涙)。

黒やんは、かつては「スミ問屋」を営んでいたものの、火事で全財産と女房子供を同時に失ってしまった。失意のうち、人生の落伍者の集まる大阪のM町に流れ着いたが、「もういっぺん奮起してスミ屋の旦那になったる」と今日も、焼きぼっくり屋に精を出します。そんなある日、黒やんに放火犯でないかという嫌疑がかけられて・・・・・・。

梅本さんは、高知県土佐清水市の出身だったのですね。ほぼ、戦後の昭和時代に重なる人生を全うした五十年という生涯だったと言えるように思います。

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