棚下照生 (3)

蔵書棚より 柔肌無宿1 棚下照生 を読む


30年くらい前に古書で安価購入したのだが、ざっと眺めたきりで通しては読んでいなかった。このたび、やっと通読したのだが、この作家の凄さ、良さを今さらながら気づきました(何やってんだか・・トホホ)

ウイキペディア情報⇒ クリック によれば、2003年に御逝去されていました。

昭和9年(1934年生まれ)で17歳にして鶴書房より単行本デビューとありますから、かなり早熟と言えるかと思います。活躍の舞台は次のようになるでしょう。 (1)単行本⇒(2)雑誌(少年向けの月刊誌など)⇒(3)昭和40年代の成年成人向け劇画雑誌。 昭和30年代は主要舞台が雑誌であり、貸本マンガ向けには描いていないところに注意したいですね。

 トキワ荘グループの中心的存在である石ノ森章太郎さん、両藤子さんのキャリアと比べると、上記(1)の単行本時代が長い~作品数も多い、というのがポイントでしょう。そして、いわゆる劇画的な手法が浸透した1970年頃から製作活動が縮小しているという点が、現在のマンガ家・田中照生の評価に直結していると言えるでしょう。

 さて、この柔肌無宿、面白いはずです。棚下さんの「女任侠もの・股旅もの」は幾つか映像化原作(テレビドラム・映画)となっている、というのも納得できます。残念ながら、この単行本に収録されているマンガ作品と映像作品の関連性についての情報は持ち合わせていませんが。

 小島功さんの流れを汲むような旧来の大人向けの漫画のお色気、石ノ森章太郎作品に通じるようなアクション、そして小島剛夕作品を思い起こさせるような本格的時代劇モノの感触。これら3つがミクスチャーとなって棚下照生独自の世界観が出来上がっています。お色気作品的要素があるのですが、あくまで「それらのお色気的表現自体は抑え目」なのも凄いことです。

 双葉社より刊行された 現代コミックシリーズ A5版ハードカバー箱入りのシリーズ(1970・昭和45年頃)で、 現代コミック7 『棚下照生/モンキー・パンチ集』が出ているのも興味深いです。劇画風・調でありながら、キャラクターはマンガチックというのがこの両者の共通点かと思いますが、モンキーパンチさんと棚下さん、その後の評価は大きく変わったモノになってしまいました。

 棚下さんのコレクターさん、けっこう居るでしょうね、当然ながら・・・。

棚下照生 (3) 棚下照生 (4)

表紙  ↑            見返し ↑

棚下照生 (2) 棚下照生 (1)

 トビラ ↑           目次 ↑

少年画報社 昭和45年7月15日初版発行 B6版 250円。マンガ本文の部分も最初4ページはフルカラー、その後10ページは2色カラーと比較的豪華なつくりかと思います。 写真は所有本ですが、糸綴じの補強がそのまま、そっくり残っています。貸出し確認表の貼り跡あり、ビニールカバー糊付けの痕跡あり、と紛れももなく貸本屋使用(仕様)です。染み、やけもヒドク、ビンテージコミックとしては並み以下のコンディションの個体です(残念。涙)。1と通巻標記がありますが2巻以降は存在するのでしょうか?情けないですが確認できていません。

2017.6.3記す。