陽だまりの樹1

陽だまりの樹を読む


20世紀の日本で活躍した、漫画というフィールドを創作の場としたクリエーター人を一名だけ挙げよ、と問われたら、個人的には「手塚治虫」の名を挙げます。ですが、ハクダイ自身は正直なところ手塚治虫の熱心な読者では無いのです(残念ですが)。駄文覚悟で以下、率直な思いを綴ってみます。

今更ながら(ほんとうに)この作品を読んでみました。ワタシのような者がこのような場所であれこれ書く(語る)なんて恐れ入りますが(涙)医学モノ、幕末モノとして傑作であることは間違いないです。

舞台、アニメ、テレビドラマへと展開されていることが証明しているように、テーマ、物語の骨格は大変に優れていると思います。昨年2020年にも舞台化があったとは全く知りませんでした(コロナ禍で微妙な結果となったようですが)。

 ですが、単行本11冊を通読してみると、どうにもマンガ作品(呼び方はコミックでも劇画でもいいのですが)としては違和感があるのでした。初出(雑誌連載 小学館ビッグコミック 1981〜1986年)よりさかのぼること約20年の手塚作品である新選組(初出は集英社少年ブック1963年)の方が、主人公の一途さが伝わってきて作品に没頭できますねえ(あくまでも個人の感想ですが)。

史実を踏まえた上でのフィクションであることが大前提なのですが、マンガ的な語り口(大きくいって表現)があまりに強いと、真実味自体が薄まって行ってしまうように思います。

送り手である手塚先生と受け手〜漫画の読み手側(読者)の「マンガ・リテラシー」の変化にズレのようなモノがあったのかなあ?と考えるのは穿ちすぎというものかもしれませんが。まあ、令和になった現行と昭和末期では、「マンガ・リテラシー」が大きく変わっている、という事なのかもしれませんが。

幕末という変革期における『種痘の普及』、『従来の漢方(医)と新興である蘭学(医)との対立』を分かり易く描き出しており、医学マンガとしては外せない作品ですね。

 映像化やドラマ化となると、マンガ的な大げさなドタバタ表現が、かなり薄くなる傾向にあるかと思いますが、重厚な活字作品(まあ、小説ですね)に伍するような、別物の「マンガ:陽だまりの樹」があったら面白いかもしれませんね。(当然の事叶わないですが)

 2021.1.31記す。(2020年暮れ〜2021年1月:amazon kindle電子書籍で読む)