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影別冊 推理特集 1960年/昭和35年


◆影別冊 推理特集1960年/昭和35年◆

●死の影 影丸譲也 50p

 香港より船で日本へ帰ろうとしていた男は、チケット取りに困っていた。幸運にも黒沼と名乗る男に、自分の代わりに乗船してもらえると助かると言われ、乗船切符を譲ってもらえる。しかし、その黒沼と名乗る男は、その直後に謎の男に『ナイフ投げ』餌食となって殺されてしまうのだった。とにもかくにも、黒沼の譲ってくれたチケットで日本への航路の旅に就いた男であったが、命を狙われる事になってしまう。男は無事日本へ帰れるのか?黒沼を殺したのは誰か?そして黒沼の正体は・・・・。

 主人公である男の素性が明かされないまま、話しが進んで行くことに違和感を感じるのだが、船旅の雰囲気も良く出ており、影丸譲也らしい手堅くまとまった作品と言えるだろう。影丸同様に、日の丸文庫で多くの作品を手掛けた『山本まさはる』を思い起こさせるような雰囲気も感じます。

●コマ漫画 奥山洋介 3p

 この作者は全く知りませんでしたが、手慣れた感じで、安心して読めます。

●二重瞼/ふたえまぶた 桑田良一 120p

 のどかな田園風景の続く農村で殺人事件が発生する。殺されていたのはとある大企業の社長であった。故人の経営する会社の社員たち、そして故人の息子、疑わしい人物は数名ほど居る。事件の解決に挑む立花刑事の推理の行方は?

 作者の桑田良一さんは、何作か拝読したこともあり、知っていましたが、経歴は不明です。(おおざっぱな検索では、かかってきません)。わたくしハクダイ的には、『類型的な絵柄が思い当たらない』なのですが、旧世代の漫画家さんという印象です(当てずっぽうですが)。手塚治虫フォロワー以降の洗練された絵?からはほど遠い・・という感じでしょうか?あくまでも個人の感想ですが。

 いわゆる推理小説というものは全く詳しくないのですが、120pという多めのページを使って、犯行の詳細、犯人の仕掛けたトリック、その他もろもろの伏線等々をじっくりと描いており、この当時の推理モノ漫画としては、かなり高水準にあると言えるでしょう。ハクダイは全く着いていけず、申し訳ないですが、斜め読みになってしましたした。タイトルの二重瞼(ふたえまぶた)が犯人に迫る重要なキーワードになっています。

● 電話は夜鳴る 山森ススム 20p

扉に「劇画工房」と記載あり(劇画工房マークあり)。

 銀行強盗に成功した男。彼は、まずはゆっくり休もうと床に就くが、興奮のため寝付けない。そこへ電話が掛かって来る。『あなたが銀行強盗をして大金を手に入れたのは知っていますよ』と電話の主は言う。そして更に続けて「ばらされたくなかったら、口止め料として盗んだ金の半分を、寄こしなさい」と男に迫るのだった。

 銀行強盗に成功した男の焦燥感を丁寧に描いており、山本ススムお得意の心理スリラー作品と言えるだろう。電話の主の正体が最後まで明かされることなくエンディングを迎える、奇妙な読後感が残る作品です。

●巻末広告等


 

 本書は山森ススム先生よりお借りした貸本漫画の一冊です。


2022.4.20アップ。