おばけの子

辰巳ヨシヒロ 追悼シリーズ1 おばけの子


皆さん こんにちわ、ハクダイです。

3月7日に御逝去された辰巳ヨシヒロ先生を偲ぶ会の日程が決まったようです。以下に公式サイトのリンクを貼っておきます。

映画「TATSUMI」

上記サイトのお別れの会(偲ぶ会)のページ

 追悼の意を込めて、あまり知られていない辰巳作品を僭越ながら何回かにわたって紹介したいと思います(ハクダイ自身、未読作がタクサンありますが)。

 今回は、第一ジュニアコミックス新書判の「泣くなおばけ」を紹介します。『泣くなおばけ』として2つの話しを収録~第一話『おばけの子」39p、第二話として『泣くなおばけ』51p、です。

 この作品の発表時期の詳細は何かとヤヤコシイ部分がありますが、それは、さておき1965年~1966年頃に制作された作品と言えます。この時期は、マンガ家(劇画家)辰巳ヨシヒロとしては、どちらかと言えば不遇な時代で、ハクダイ作成の「辰巳ヨシヒロ・ヒストリー」では、「 第5期 貸本衰退期~出版人としてのサバイバル」に相当します。この期間に描かれた作品は、辰巳ヨシヒロの膨大な作品群の中でも軽視されがちな傾向にあると言って差し支えないかと思いますが、ハクダイ個人としては、愛着のある作品が多いです。

以下あらすじです。

『おばけの子』

 チビチビと周囲から、いつも、からかわれているヒロシには誰にも言えない秘密があった。なんと、ヒロシの右腕は、いわゆる妖怪ろくろ首の首よろしく、数メートル以上も伸びるのであった。こども心に、この秘密が周囲に知れたらどんな不幸が待ち受けているかを悟っていたヒロシであったが、ある日、池で溺れそうになっている女の子を助けようとした事から「秘密」を不良グループに知られてしまう。不良たちは、秘密をネタにヒロシを脅し、悪事の片棒を担がせようとするが・・・・。

『泣くなおばけ』

 ケン一(けんいち)は自分が「デベソ」であることを、とても恥ずかしく思っていた。ある日、思い余ったケン一は、包丁でデベソを切り取ろうとしたところ、デベソが「3本目の手」のように成長し始めているのに気づく。3本目の手は次第に大きくなり、神経も通いスケッチを描くまでに成長する。3本目の手との「共生」もうまく行っていたケン一だったが、「仕立て屋の金次」なるスリの名人に、3本目の手の秘密を知られてしまう。金次は、ケン一にスリの手伝いをさせようとするのだが・・・・。

 以上、あらすじを読んで頂ければお分かりのように、映画TATSUMIや「劇画漂流」から辰巳ワールドを知った方には、トンデモナイ脱力系マンガ、にしか映らないかもしれませんが、辰巳作品の魅力の一つであると断言しますね、ハクダイ的には。辰巳氏自身が考えていたモノとは大きく異なるカタチで成長していく「劇画」を横目に見ながら、零細な出版ビジネスを、なんとか軌道に乗せようと悪戦苦闘しながら、辰巳氏はマンガを描いていた、と言えるだろう。

●この2話分の「おばけモノ」の成り立ち(発表から単行本化)については、貸本末期の頃という事もあるのでしょう、とてもヤヤコシイ事になっています。手持ちの資料を一部推測を交えて再構成すると次のようになります。

 B5判雑誌で発表した「おばけ」シリーズ2作品(共に16p)を、A5判貸本用にアレンジ(各コマの再構成~ページ数増加)。その後、そのA5判のモノを、そのまま新書判へ転用。ハクダイはそのように考えていますが、B5判雑誌掲載分(マンガジャイアンツ掲載分)に、残念ながら当たれていませんので、確証はありません。

 以下は、雑誌発表から単行本収録までの流れになります。

 (1)雑誌掲載の『おばけの子』マンガジャイアンツ(日の丸文庫)1966年(昭41)1月号/16p/B5判:青林工藝舎「大発見」年表に記載あり 

 (2)雑誌掲載の『泣くなおばけ』マンガジャイアンツ(日の丸文庫)1966(昭41)年5月号/16p/B5判:青林工藝舎「大発見」年譜に記載あり 

 (3)A5判貸本「お化けの子」・発行年は、短編誌「青春31集」の広告があることより、1966年(昭41)12月頃

 収録作は3作で、③の『どしゃ降り』については年譜に記載あり。マンガジャイアンツ1966年7月号*詳細不明 と記載。 また、このA5判貸本判「お化けの子」のついては、年譜では触れていません。

 ①『お化けの子』39p ②『泣くなお化け』おばけの子第2部/51p   ③『どしゃ降り』27p

(4)新書版『泣くなおばけ』・第一ジュニア・コミックス 奥付には発行年月日の記載は無いが、著作権マークに続けて「1969 Y.TATSUMI」とあるので1969年(昭44)の刊行と思われる。

 収録作は3作品で、作品①『泣くなおばけ』として2つの話を収録~第一話として『おばけの子」39p、第二話として『泣くなおばけ』51p、作品②『タイムトンネル』37p、作品③『雨と凶器』32p。

☆(3)と(4)に収録されているモノは丸っきり同じ原稿のようです。

おばけの子

新書判のカバー。辰巳先生の写真があります。

おばけの子 (4)

手持ちのA5判貸本はカバー欠です(涙)

おばけの子 (3)

『おばけの子』より。小学生?ですが、何年生かは特定できないです。

おばけの子 (2)

『泣くなおばけ』より。おなかから手が出ています。日の丸小学校・・・・御愛嬌です(掲載誌が「マンガジャイアンツ」ですので)。

おばけの子 (1)

『泣くなおばけ』より。こちらも、「光伸」病院、やっぱり御愛嬌です。