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2.佐藤まさあきの生み出す魅力的なアウトサイダー&アウトロー

佐藤まさあきTOPへ

野望、影男、黒い傷跡の男、そして堕靡泥の星へ

ここでは、管理人ハクダイが愛する、佐藤まさあきの代表作4作を紹介したい。実際、この4作以外にも佐藤まさあきには傑作・ヒット作が数多く存在するが、今回は独断と偏見で選ばせていただいた。

1.野望 

(1)作品の基礎情報

概要佐藤まさあきの代表作を一つだけ挙げてくれといわれたら、個人的にはこの「野望」を選ぶ。
「野望」は、A5判の貸本時代と雑誌時代(漫画ゴラク)の2つの版(バージョン)が存在する。
雑誌連載の方は人気が爆発し、掲載誌の「漫画ゴラク」を隔週刊誌から週刊誌へまで押し上げる原動力となった。

佐藤まさあき『野望』新旧比較表 
クリックで一覧表が見られます。

あらすじ猪斐雅彦。彼の「野望」は、父が乗っ取られた「東和鉄道」を手中に収めること。もともと、東和鉄道は雅彦の父が創設した会社であった。父を自殺に追いやり、自分や母、妹を貧困のどん底に突き落とした「現・東和社長・矢島」への復讐を誓う雅彦。合法・非合法を問わず、あらゆる手段を使い、彼は「矢島・東和鉄道~東和コンツェルン」に闘いを挑んで行く。

解説猪斐の協力者となるアウトサイダーたち、猪斐を取り巻く女性たち。そして、敵である矢島とその部下たち。登場人物の造形も確かで、倦むことなく作品に没頭できる。
佐藤まさあきの構成の巧みさには定評があるが、この一大長編では、その巧みさが遺憾なく発揮されており、目の肥えたマンガ・劇画ファンも唸らずにはいられないはずである。雑誌の長期連載にありがちなダラついた箇所がなく、著者のこの作品に対する並々ならぬ決意・執念を感じさせる。

 

(2)貸本版「野望」

 佐藤まさあき/佐藤プロダクション/A5判/単行本/1963~1964年(昭38~昭39)/刊行時期詳細不明/約500p 
 
*当初は全7巻を想定していたようだが、売れ行き不振のため全4巻となる。5巻以降が未刊行。しかし、エンディングを迎えていないという訳ではなく、その後に描かれる雑誌版とほぼ同様のエンディングとなっている。
*最終4巻には4(四)の表記はなく「完結篇」と標記されている。
*再版はない。貸本版を読むには、オリジナルの貸本を入手するしかない。

貸本版「野望」単行本表紙(全4冊)。抑え目の色使いが個人的に気に入っている。自分が所有している「二部」は表紙に汚れがあるのが残念。表紙デザインは佐藤氏本人によるものだろう。
貸本版「野望」単行本表紙(全4冊)。抑え目の色使いが個人的に気に入っている。自分が所有している「二部」は表紙に汚れがあるのが残念。表紙デザインは佐藤氏本人によるものだろう。

(3)雑誌版/漫画ゴラク連載「野望」

  佐藤まさあき/漫画ゴラク(日本文芸社)/1971~1972年(昭46~47)/約2200p 

「野望」の人気により、掲載誌の「漫画ゴラク」は隔週刊から完全週刊誌化されたとされるが、本作品の掲載時期の詳細については調査中である。
総集編的な臨時増刊的な雑誌を含め、数種類が単行本化されている。貸本版の単行本と混同しないように注意が必要だ。

(4)「野望」単行本(現時点で入手しやすい)

①電子書籍:ebookjapanより全9巻で販売。

②松文館より発行の全3巻:2000年(平12)に刊行されたが現在は絶版扱い。

(5)「野望」単行本(やや入手困難~コレクター向け)

◎下記①~③の3種類があり、全て全7巻である。ただし、各巻のページ割付は若干異なっている。

 ゴラクコミックス/日本文芸社/A5判/1973~1974年(昭48~昭49) 

 コミックギャラリー・佐藤プロ劇画選集/佐藤プロダクション/新書判/1977~1978年(昭52~昭53) 

 漫画ゴラク・コミックス/B5判/雑誌の総集編的な編集/1972~1973年(昭47~昭48) 

 

漫画ゴラク・コミックス/B5判/全7冊の前半の1~4部までの表紙。第1部のみタイトルの文字フォントが異なる。
漫画ゴラク・コミックス/B5判/全7冊の前半の1~4部までの表紙。第1部のみタイトルの文字フォントが異なる。
漫画ゴラク・コミックス/B5判/全7冊の後半の5~7部までの表紙。7部は、蛇沼刑事の佇まいが印象的。
漫画ゴラク・コミックス/B5判/全7冊の後半の5~7部までの表紙。7部は、蛇沼刑事の佇まいが印象的。

 

(6)テレビドラマ化について

*ハクダイは未見である。

*「テレビドラマデータベース」によると、放送期間は1977年(昭52)10月6日~1978年(昭53)3月23日(毎週木曜日22:00~22:54)全24回、キー局はANB(局系列はANN)。主な出演者は天地茂、三田佳子、山形勲、池上季美子、左とん平。ナレーターは槙大輔。

 ドラマのストーリー概要を読む限りでは、復讐劇という点は原作と同様だが原作の内容からは、かけ離れた内容?という印象。DVD化を期待したい。

(7)ノベライズ(小説化)について

著者(豊田行二)・原作(佐藤まさあき)とクレジットされた小説が青樹社より刊行(1977年(昭52)11月10日発行)されている。
*表紙と裏表紙には、テレビドラマのワンカットが使用されているようだ。
ハクダイは、このノベライズ本を長年探し、2012年頃に入手、読了した。このノベライズが、テレビドラマを単純にノベライズしたものなのか、テレビドラマと異なる内容なのかは、テレビドラマを未見のため判断できない。
*基本、原作マンガを下敷きにノベライズされていることは間違いない内容だが、エンディングは原作とは大きく異なり、ハッピーエンドに近いものとなっている。原作マンガの持つ孤高のアウトサイダーロマンは薄められた印象のエンディングだが、これはこれで面白い。

 

2.「影男」シリーズ

(1)作品の基本情報

◎ストーリー、シリーズ構成
概要佐藤まさあきがノリにノって描いた現代・昭和の股旅物。主人公・柴崎竜二は人から「影男」と恐れられている一匹狼の殺し屋。
貸本短編集『影』にて日の丸文庫の「50集記念」を契機に昭和35年に誕生した(実際は『影』51集)。
全4社にわたる貸本マンガ出版社からの刊行後は、雑誌プレイコミック(秋田書店)へ舞台を移し、人気を博す。また、正式には、副題的に「日本拳銃無宿」とあたまに付けてから「影男」とするのが適切かもしれない。

「影男」は10年以上にわたって描き継がれたロングセラーの人気作である。おおまかな作品発表時期は次の通り。

●貸本時代 1960年(昭35)~1967年(昭42)
●雑誌時代 1968年(昭43)~1972年(昭47)頃?

     ・また、1977年(昭52)に読み切り作品が発表されているのが確認できた。

◎あらすじと見どころ

あらすじ父母を死へと追いやった仇敵「御手洗」を探して全国を放浪する影男。
非道・非情に思われている影男ではあったが、彼には彼なりの倫理感と正義感があった。愛銃ワルサーP38を手に、白のコートと白のソフト帽に身を包み、暗黒街を今日も行く。

解説犯罪にまつわる女性が数多く登場するアダルトな内容の作品だが、発表媒体がめまぐるしく変わると共に作品中の性的描写もより激しくなっていく。
手持ち資料が少ないため詳述できないが、昭和30年代の漫画・劇画における性描写の限界を知るには恰好のテキストかもしれない。
ニヒルさや虚無感を漂わせた作品世界は、発表当時は支持を集めたと思われるが、後年はギャグやパロディーの対象にされがちであった。近年のような飽食の時代には理解されにくい作品かもしれない。
怪しげなオカルト集団との対決なども多くある。これをお笑いの対象とするか、優れたスパイアクション物と見るかは人それぞれだが、構成に破綻がないだけに、まさに独自の「佐藤まさあきワールド」になっている。先に述べた「怪しげなオカルト集団」について、佐藤氏自身が次のように記述しているので引用する。

●「日本拳銃無宿影男3巻」佐藤プロ佐藤まさあき劇画自選集19の解説より引用

”プレイコミック”に連載中からそうであったが、影男シリーズは、組織暴力団を相手に闘うリアルな作品と「暗殺魔団」という作品のように、まるで忍者もどきの敵が出現する荒唐無稽な作風のものとを交互に描いてきた。
 

(2)ふたつのシリーズ:貸本版と雑誌版

①「影男」シリーズ貸本版は、日の丸文庫東京トップ社佐藤プロセントラル出版4社より刊行されている。貸本版は単行本スタイル(1冊全て、百数十ページが影男)の場合と、雑誌形式「短編・数十ページ」で発表された場合とがある。

雑誌版は、秋田書店プレイコミック本誌もしくは、その別冊等に連載(掲載)されている。これら雑誌版は佐藤プロ及び秋田書店より単行本化された。

③残念ながら、この「影男」シリーズの全容を紹介するようなデータをハクダイは持っていない。しかしながら、少なからず存在する「影男」ファンによって「影男」シリーズ・完全リストが作られている、と想像している。

(3)やや複雑な単行本化の流れ

①「影男」シリーズが貸本マンガからプレイコミックへ移行する過渡期に、新書判の単行本が佐藤プロより5冊刊行されている。

②雑誌(プレイコミック本誌その他)に発表された作品は貸本版の自作リメイクである場合がある。

③貸本版→佐藤プロ新書判(版)/描き下ろし単行本に相当→雑誌版と都合3回描かれている作品もある。

※ハクダイとしてはまだまだ情報不足感のある「影男」シリーズ。全貌が明らかになることを切に願っている。また、追加情報をお持ちの方がいらっしゃればお問い合わせページからご連絡いただき、情報をシェアさせていただければ大変ありがたい。

 (4)「影男」単行本ガイド

◎入手しやすい影男

①電子書籍:ebookjapan:全3巻で販売。雑誌版(プレイコミック本誌その他掲載)の選り抜き集と理解して良いだろう。

松文館より発行の全3巻:2001年に刊行されたが現在は絶版扱い。上記①の電子書籍の元版と思われる。貸本劇画傑作選(1)~(3)として影男が3冊出ている。

◎やや入手困難な影男

①佐藤プロダクション発行

a.佐藤プロ劇画自選集/全11冊/B6判/1985~1987(昭60~ 昭62)

b.佐藤プロ劇画選集/全2冊/B6判/1978(昭53)

※a.bの収録作品は重複する。 

  ②秋田書店版(4冊)

・ながれ者/B6判/1970年(昭45) 

・ブラックバンク編/B6判/1975年(昭50)

・Gの仮面編/B6判/1975年(昭50)

・副題無し/B6判/1987年(昭62)

◎入手困難~マニア向けの影男

①佐藤プロからの新書判(5冊)

貸本末期(雑誌移行への端境期)に佐藤プロダクションより「佐藤まさあき劇画叢書」として刊行された物。貸本マンガ(A5判)で発表された物をリメイクした物と推測される(5作品全てがそうなのかは不明)。タイトルは次の通り。

佐藤まさあき劇画叢書4「けものの宿」/同5「みなごろしの歌」/同6「無音拳銃」/同7「暗い怒り」/同8「暗殺魔団」

 ②A5判貸本マンガ

1冊の全てのページが「影男」の長編的な作品と、1冊のうちの何割かが「影男」の「短編」的な作品が混在するようだが、調査中で、未解明な部分が多い。オリジナル「影男」が、このA5判貸本マンガ時代に存在する。佐藤まさあきファン、影男ファンなら、ぜひとも最低1冊は手元に置きたいものである。

 

(5)影男の変遷~3つの「けものの宿」~3バージョンある「けものの宿」

①第1作
 佐藤まさあき/貸本マンガ版/A5判/単行本(併録作品なし)/セントラル文庫/1962(昭37)/170円/全136p 

復刻(再収録)はされておらず、このオリジナル本を入手するしか読む方法はない。最終ページには、日本拳銃無宿「影男シリーズ」第2話と記載されているが、セントラル文庫よりの長編シリーズとしての「影男」の第二作という事なのだろうか?佐藤氏の自伝の作品リストには副題のみが記載されており「影男シリーズ」である旨が記載されていない、また作品自体のページ数の記載もない。これらの事情と都合4社の貸本マンガ出版社からの刊行(短編誌である日の丸文庫「影」含む)という事が貸本時代の影男シリーズの全容が不明瞭になっている一因である。

②第2作
 佐藤まさあき/佐藤まさあき劇画叢書④/新書判の書きおろし単行本/佐藤プロダクション/1966(昭41)/220円/全188p 

③第3作
プレイコミックに1969年(昭43)に掲載。ブログサイト「望遠文庫」のデータによれば、プレイコミック掲載時は「孤狼の宿」というタイトルだった可能性があるようである。単行本収録は、『佐藤まさあき劇画自選集20』、『日本拳銃無宿・影男・第4巻・関東暴力地図』(佐藤プロ/1986年(S61))のみであるようである。

A5貸本版の「けものみち」表紙。カバー貼り付け貸本仕様で色味が実際と異なる。
貸本版「けものの宿」作品冒頭。"その男……云わずと知れた影男だ!!" 
貸本版「けものの宿」作品冒頭。”その男……云わずと知れた影男だ!!”
貸本版「けものの宿」扉ページ。
貸本版「けものの宿」扉ページ。

 

佐藤プロの新書版「けものの宿」表紙。貸本版よりさらにニヒルさが増した印象の影男。
佐藤プロの新書版「けものの宿」表紙。貸本版よりさらにニヒルさが増した印象の影男。
佐藤プロ新書版。全体に描き込みが少ないのが逆に新鮮である。
佐藤プロ新書版。全体に描き込みが少ないのが逆に新鮮である。
佐藤プロ新書版。唐突に挿入される歌詞。
佐藤プロ新書版。唐突に挿入される歌詞。
佐藤プロ新書版。ダンサーの作画は松森正氏の手によるものか?
佐藤プロ新書版。ダンサーの作画は松森正氏の手によるものか?
プレイコミック版「けものの宿」が収録されている佐藤プロ版(B6判)4巻。
プレイコミック版「けものの宿」が収録されている佐藤プロ版(B6判)4巻。
プレイコミック版「けものの宿」扉ページ。女性の絵は松森正氏ではないように思われる(この時期松森氏は既に独立している?)
プレイコミック版「けものの宿」扉ページ。女性の絵は松森正氏ではないように思われる(この時期松森氏は既に独立している?)
プレイコミック版。”影男”主題歌『影のブルース』、作詞/佐藤まさあきと記載されている。
プレイコミック版。”影男”主題歌『影のブルース』、作詞/佐藤まさあきと記載されている。

 

プレイコミック版。コートを着て現れる影男だが、銃撃時はコートを脱いでいる。
プレイコミック版。コートを着て現れる影男だが、銃撃時はコートを脱いでいる。
プレイコミック版。
プレイコミック版。

(6)影男を知るために参考になるWebサイト

マンガ研究家の中野晴行氏のレビューまんがのソムリエレビュー 第60回 イカス! B級アクション劇画。佐藤まさあき『影男』(2011年(平23)3月14日)
・影男の作品世界が的確に紹介されている。

ブログ「望遠文庫」日本の漫画と劇画とその他 
・プレイコミック版『影男』の各タイトルについての丁寧な解説あり。

③単行本表紙集

前ページでも紹介しているサイトになるが、佐藤プロ版と秋田書店版の表紙を見ることができる。

DELETE MYSELF ! DELETE MYSELF !
・劇画・漫画の紹介がメインの個人サイト。

 

3.黒い傷跡の男

(1)作品の基本情報

あらすじ主人公は鮎川鉄也。炭鉱閉山によって、苦しい生活を強いられた彼は、人買いに連れ去られた恋人「ルミ子」を追って東京へ行く。やっと見つけたルミ子は場末のストリッパーに成っていた。そして、次第に悪の道へ落ちこんで行く鉄也。彼は、貧困、そして社会全体を恨み、犯罪に手を染めていく。

解説佐藤まさあきが3度にわたって描いた「ハードボイルドもの」。社会悪に対する怒りが全編を貫く「社会派劇画」の古典的作品として評価が高い。「単純な正義感の危うさ」という問題に取り組んでおり、3度も描き続けた、作者の「正直さ」と劇画制作への「思い入れ」を感じさせる作品である。

(2)作品の詳細 3回描かれた「黒い傷跡の男」

ハクダイは2、3作目は全部を読めているが、1作目は全部を読めていない。

◎1作目:A5判貸本マンガ時代

①全10冊(部・巻)/1961(昭36)~1962(昭37)/三洋社

②貸本マンガのシリーズ「佐藤まさあきハードボイルドマガジン」シリーズの一つのラインアップとして長編作品的に発表。本作は、このシリーズの11~20号(集)にかけて刊行されている。この『佐藤まさあきハードボイルドマガジン』の全容については調査中だが、今、手元にある3冊は次の通り。 

*佐藤まさあきハードボイルドマガジンNo.1:「凶銃に命を賭けろ・(前)」

* 同No.14:「黒い傷跡の男・第四部」約130p

*同No.15:「黒い傷跡の男・第五部」約130p

ちなみにNo.1とNo.14には発行人として後に青林堂を興し「ガロ」編集長としてマンガ史に大きな功績を残された「長井勝一」氏の名がある。

③復刻について

*ブックオンデマンド(BOD)スタイルで、発行「㈱青林堂ネットコミュニケーションズ」として1巻のみが、ペーパーバックスタイルではありますが書籍化されている。当方所有分には、発行日2002年9月19日。現在は入手不可能ないしは入手困難かと思われる。

④本作を論じた文

*三宅秀典氏の次の論考が秀逸である。。

a.貸本マンガ史研究20号(2009年3月):「黒い傷跡の男」試論1-その読者をさがして 三宅秀典

b.貸本マンガ史研究21号(2009年10月):「黒い傷跡の男」試論2-筑豊から、そして筑豊へ(上) 三宅秀典

c.貸本マンガ史研究22号(2011年2月):「黒い傷跡の男」試論3-筑豊から、そして筑豊へ(下) 三宅秀典

「黒い傷跡の男」四部を収録している『佐藤まさあきハードボイルドマガジン』14集。作品タイトルは記載なし。
「黒い傷跡の男」四部を収録している『佐藤まさあきハードボイルドマガジン』14集。作品タイトルは記載なし。
『佐藤まさあきハードボイルドマガジン』15集。「黒い・・五部」の記載あり。
『佐藤まさあきハードボイルドマガジン』15集。「黒い・・五部」の記載あり。
貸本版(1作目)「黒い傷痕の男」第一部(巻)の復刻版表紙。
貸本版(1作目)「黒い傷痕の男」第一部(巻)の復刻版表紙。
貸本版、オリジナルと復刻版の大きさ比較。復刻の薄さがおわかりいただけるだろうか。
貸本版、オリジナルと復刻版の大きさ比較。復刻の薄さがおわかりいただけるだろうか。

貸本版第五部のあとがき。左ページの写真が、いかにも佐藤氏らしい(出たがりの性格だろうか?)
貸本版第五部のあとがき。左ページの写真が、いかにも佐藤氏らしい(出たがりの性格だろうか?)

◎2作目:佐藤まさあき劇画叢書の①②として

①「黒い傷跡の男・前編」、「同・後編」が刊行
 佐藤まさあき/新書判/佐藤プロダクション/1966年(昭41)/220円 

②1作目をリメイクして新書判2冊として新たに描き下ろしたもの。この新書判でしか読むことは出来ない。貸本マンガから雑誌への端境期に自らの出版社「佐藤プロ」より刊行された新書判シリーズ「佐藤まさあき劇画叢書」の最初の2冊が、この2冊である事からも、佐藤氏のこの作品への思い入れがうかがえる。

新書判「黒い傷痕の男」リメイク版、全2巻の前編。佐藤まさあき劇画叢書の1冊目ということからも、作者のこの作品への思い入れが感じられる。
新書判「黒い傷痕の男」リメイク版、全2巻の前編。佐藤まさあき劇画叢書の1冊目ということからも、作者のこの作品への思い入れが感じられる。

 

新書判「黒い傷痕の男」(全2巻)の後編。帯をイメージしたデザインかと思われる。
新書判「黒い傷痕の男」(全2巻)の後編。帯をイメージしたデザインかと思われる。
新書判リメイク版の前編より。カバー見開きに記載の「作者のことば」。
新書判リメイク版の前編より。カバー見開きに記載の「作者のことば」。

 

新書判でのリメイクの下巻のカバー見開き部分。意外な方が寄稿されている?
新書判でのリメイクの下巻のカバー見開き部分。意外な方が寄稿されている?

◎3作目 漫画ゴラク/日本文芸社に連載

①連載は1973年(昭48)年に開始している。連載が翌年にかけてなのか等、連載期間等の詳細は調査中。

②単行本化について

a.その1 芸文コミックス(芸文社)より1冊のみ刊行/黒い傷跡の男・激流編(巻数表記無し)/B6判/1975年(昭50)/約330p/発行元の芸文社は、連載誌の日本文芸社とは全くの別会社であることに注意。
芸文社の「漫画天国」には「堕靡泥(ダビデ)の星」を連載している。芸文コミックスの佐藤まさあき作品のラインナップは、「堕靡泥(ダビデ)の星・7冊」、「拳銃対拳銃・3冊」、「黒い傷跡の男」、「凶銃に命を賭けろ」、「凶銃ワルサーP38」である。
佐藤氏の自伝を読む限りでは、連載の評判はあまり芳しいものでは無かったようである。1冊のみの刊行となっていることからも、商業的には成功とは言い難いのが、この3作目かも知れない。

b.その2 サニー出版より完全版として全2巻(上下巻)で刊行/B6判/2巻併せて1100p程度/2000年(平12年)

*約25pごとに章立てされており、最終章が38章に相当することから、連載は全38回に及んだと推測される。

*下巻には佐藤氏のあとがきが掲載されている。

芸文コミックスとして1冊(巻)のみ刊行された物(約330ページ)。 ①激流編と裏表紙にはあるが、2巻移行は存在しないようだ。
芸文コミックスとして1冊(巻)のみ刊行された物(約330ページ)。 ①激流編と裏表紙にはあるが、2巻移行は存在しないようだ。

 

雑誌連載より約27年後に完全収録の単行本が刊行された。表紙の絵は当時の物と推測する。
雑誌連載より約27年後に完全収録の単行本が刊行された。表紙の絵は当時の物と推測する。

 

完全版(2000年)の上下巻の下巻表紙。女性の表情が印象的。
完全版(2000年)の上下巻の下巻表紙。女性の表情が印象的。

4.堕靡泥(ダビデ)の星

(1)作品の基本情報

概要芸文社の「漫画天国」に1972年(昭和47年)より連載された「ピカレスクロマン巨編」。「漫画天国」での連載期間等、連載状況の詳細は不明だが、単行本で描き下ろされた物もある。この作品を超えるピカレスクロマン劇画・マンガは、そう多くはないだろう。2015年(平27)現在、最も知られた「佐藤まさあき作品」は間違いなくこの作品である。
真偽のほどは不明だが、近年は「フランスより実写映画化のオファーがあった」との噂もあるようで、この作品の持つピカレスクロマンとしての魅力が普遍的である証左となっている。
連載開始当時は、エロ自体を主軸に据えた劇画雑誌(後年、三流劇画雑誌と総称される)は、まだ刊行されておらず、この作品のエロ物的な要素がマンガ読者に与えた影響は、かなり大きかったと思われる。
漫画天国休刊後は、書き下ろし単行本での発表、プレイコミックでの再連載と、かなりの長尺作品になっています(タイトルに「新」がついて発表されているものもある)。

 

あらすじ70億の遺産を手にした「神納達也」は、自らの淫虐な欲望のままに姦淫と殺戮を繰り返していく。その彼の出自には恐るべき秘密があった。脱獄囚の強姦により誕生した呪われた出自を持つ達也。大学教授である父は、母そして、達也が許せない。母は自殺し、父は達也自身が葬り去る。実の父である脱獄囚と達也は後年、邂逅するが、達也はその実父をも手に掛けるのであった。

Wikipediaに項目がある。実写映画とオリジナルアニメーションについてが中心ですが、ウイキペディアに項目があることからも、この作品の注目度の高さがわかる。

(2) シリーズの全貌

◎オリジナルのマンガ「堕靡泥の星/ダビデの星」は、佐藤プロ版(全21巻)とプレイコミック版の「新・ダビデの星/全7巻」の計28冊から構成される。

①佐藤プロ版(全21巻)/佐藤プロ劇画自選集

a.1~16巻1983(昭58)~1985(昭60)に刊行/ 漫画天国に連載した分/連載時期は、1972(昭47)~1977(昭52)/連載時期の詳細は不明

b.17~19巻(1986(昭61))/ 漫画天国に連載した分/タイトル頭に「新」と付く/連載時期は、1979(昭54)頃/連載時期の詳細は不明

c.20~21巻/1985年(昭60)頃に描き下ろし

②秋田書店プレイコミックス版(全7巻)
1987(昭62)~1988(昭63)年に刊行/秋田書店のプレイコミックに連載した物/連載時期は1983年(昭58)~1984(昭59)年

*2005年に青林堂よりコミックオンデマンド形式で復刻が出ていたようだ。9巻までは確認できるが、ページ割付など詳細は不明。現在は絶版扱いで入手困難。

③ノベライズ(小説化)

a.佐藤まさあき氏自ら小説化を行っている。サン出版の「小説官能読切」に連載/連載時期の詳細は不明

b.単行本として道出版より上下巻の2冊(全、約1350ページ)が刊行/新書判/道出版発売(発行は松文館)

c.松文館コミックノベルシリーズについて

(4)実写映画化

・残念だがハクダイは未見である。

堕靡泥の星(ダビデの星) 美少女狩り
1979年(昭54)/100分/日活ロマンポルノ(成人映画指定) 監督:鈴木則文、脚本:大和屋竺、キャスト:波乃ひろみ ・土門峻・八城夏子・ 岡本麗 小川亜佐美・菅原文太

 *ネット上で多くの情報を得ることが出来る。

 *DVD化されていて容易に入手できる(R-18指定)。

(5)オリジナルビデオ化(18禁~18歳未満禁止扱い)

 ①媒体はビデオ(VHS)が基本。べータ版が存在したかは不明。その後、DVD化もされているようだ(詳細は調査中)。

・Wikipedia情報によると5本(作)作成されたようだ。ハクダイは2本だけ入手済み。

a.バイオレンス劇画 「堕靡泥の星」
1~4の4本/1989~1990(平元~平2)  第1巻 悪霊誕生、2巻 アイドル凌辱、3巻 陰獣の砦、4巻 悪霊は永遠に、の4作(本)

b.バイオレンス劇画 「新・堕靡泥の星 淫魔伝説」
1本/1991(平3)年

 (6)単行本の入手について

◎単行本は上記(2)①②で紹介しているように、全28巻(冊)が基本であるが、他にもいくつかのシリーズがある。他作品同様に、次のサイトが参考になる。

DELETE MYSELF ! DELETE MYSELF !
・劇画・マンガの紹介がメインの個人サイト。

①堕靡泥の星完全版(全9巻)
 佐藤まさあき/A6判(文庫版)サニー・コミック文庫/サニー出版/2007(平19)年~2008年(平20) 

*ハクダイは未見である。現在、最も入手しやすいシリーズと思われる。

②芸文コミックス版(全7冊)
 佐藤まさあき/芸文社/連載していた漫画天国の出版元である芸文社から刊行されていたシリーズ/刊行時期は1973(昭48)~1975(昭50) 

*マニアックなラインナップゆえに少なくないファンを持つ芸文コミックス。ハクダイは2冊所有しているのみである。

③愛蔵版(アスペクト版)(全3巻)
 佐藤まさあき/㈱アスペクト/A5判/1998年(平10) 

*ハクダイはどういう分けか2セット所有。1セットは3冊とも帯付きだったりする。

④コアラブックスデラックス(全2巻)
 佐藤まさあき/コアラブックス社刊/判型不明/1989(平元)~1990(平2)年 

*ハクダイは未見。表紙を見る限りでは、オリジナルビデオと連動しての企画刊行と思われる。