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ハイスピード/HIGH SPEED 創刊号 三洋社 昭和36年/1961年

 ハイスピード/HIGH SPEED 創刊号 三洋社 昭和36年/1961年

 

※掲載内容は次のとおり。

・ライフルガンのすべて(第一回) 佐藤まさあき 8p 写真と文章による銃の解説

・仇/かたき 白土三平 30p

・みんな消えてゆく 辰巳ヨシヒロ 36p

・身変わりは君に 山森ススム 30p 扉に劇画工房と記載あり(劇画工房マークあり)

・ハンター 佐藤まさあき 41p

・表紙:さいとう・たかを、目次ページのカット:辰巳ヨシヒロ

・さいとう・たかを、辰巳ヨシヒロの二人がそれぞれ1p分、創刊号祝(的な)寄稿を寄せている。

※気になるところなど

・佐藤まさあきによるライフル銃の紹介(解説)のページが幾分唐突な気もしますが、これはこれで有りかもしれません。それだけ、銃に対する関心が大きかったということでしょうし、貸本漫画の商品としての完成度を考えるなら当然かもしれません。

・大阪より劇画を標榜して東京へ出てきた劇画工房の面々より幾分年上で、東京の作家である白土三平。中央(東京)への敵対意識と憧憬がない交ぜとなった複雑な心情を抱えていたと(思われる)劇画工房の面々と、彼らより幾分年上で生活のためという側面はあったでしょうが、明確に描きたいテーマがあり、自分の描く作品の呼称への興味は薄かった(と思われる)白土三平。まさに白土三平 VS 劇画工房 の図式で読み解きたくなってしまいますね。

・山森ススムが昭和36年にあっても劇画工房を名乗っていたという事も興味深い点です。

※以下各作品の紹介です。

●ライフルガンのすべて(第一回) 佐藤まさあき 8p 写真と文章による銃の解説

 ライフル銃の写真は、佐藤まさあきの著作等より推測するに、海外の雑誌などに掲載された写真よりの転用(転載)と思われます。無断転載の可能性が少なからずありますが、解説記事・紹介記事としての水準は結構高く、数多くのテーマを自ら開拓した佐藤まさあきのマーケッター、プランナーとしての才能を垣間見る事ができるものになっています。

●仇/かたき 白土三平 30p

 いわゆる西部劇映画からの派生としての劇画/漫画作品と言えるでしょう。妻子を惨たらしく殺された男は復讐だけを人生の目的として生きてきた。15年の年月を経て復讐〜仇討ちの機会を得た男であったが・・・・。男にとっては過酷な運命が待っていた。

 人間の生きる意味とは何?と思わせる一篇に仕上がっています。白土作品については、多くの情報が流通しているでしょうから、あえてここで何かを書くまでもないと思いますが・・・。

●みんな消えてゆく 辰巳ヨシヒロ

 銀行強盗で六千万の大金を手にした三人の男たちは、奥深い山奥まで逃げ込む。三人の男たちは他の三人の仲間を裏切り〜殺害しており、各自の分け前(取り分)が増えて良かったとさえ思っていた。三人の息子を持つ一癖ありそうな初老の女性「キヌばばあ」の家に身を寄せる(厄介になる)ことを許された三人であったが、結局二人が次々と死んで行き、残るのはボス格の男一人になってしまう。二人の死には、キムばばあの息子たちが関与していることに気付いたボス格の男は、『あの金は魔物だ、あの金を持つと人を殺したくなるぞ』と、キヌばばあに、訴えるのだが・・・。

 登場人物全員が曲者というか悪人的なフンイキを漂わせていて、不気味なというか、悪趣味なテイストに満ちた作品です。日本、土着的なフンイキが濃厚ですが、埋葬シーンでは十字架の墓標が描かれたりと、無国籍なフンイキも少なからずあります。

●身変わりは君に 山森ススム 30p

 ある夜、友人と別れて一人帰路につく男は、ナイフを持った男による凶行(おそらく殺人)の現場を偶然目にする。あわてて、住んでいるアパート三洋壮まで逃げ帰るが、ナイフを持った男に住んでいる場所を知られてしまったようだ。アパートに友人と一緒に住んでいる男であったが、とにかくアパートを出るのが先決と考えて、さっそく引っ越しを始めようとする男だったが・・・。

 身近に住んでいる人間が、もし〇〇〇だったら・・・。日常生活の危うさ、何気ない日常に潜む恐怖への強い関心。作者山森ススムの創作の原点には、そのようなモノが存在していたと想像します。多かれ少なかれ、そのような感覚を多くの人が持つのでしょうか、飛びぬけて強い関心だったと思われます。

●ハンター 佐藤まさあき 41p

 売れない漫画家(劇画家)である安田。安田の学校時代の友人である鮫島は、社長の息子であり、自動車を乗り回し、高額なライフル銃を持ち、面白おかしく暮らしている。学校時代は安田と鮫島はライバル関係にあったが、安田の父の死後は途端に貧乏になってしまった安田であった。安田が想いを寄せる女性マリちゃんと鮫島が親しくしているという噂を聞いた安田は、ある目的のために、鮫島にバカにされながらも最低価格のライフル銃をやっとの思いで購入する。鮫島と一緒に狩猟に出かけた安田であったが、恐ろしい、秘めたる目的を持っていた。安田は何をしようとしているのか、

 ”敗北者”となった男がプライドを取り戻すべく、あがきもがき復讐の鬼と化す、佐藤まさあきの得意とするテーマの作品です。ですが、熱気というか怨念というか、作者の作品への思いが希薄なような気がしてなりません。酷な言い方ですが、アシスタントの習作なんではないだろうか?そんな疑念さえ浮かびます。


 

山森ススム先生の蔵書をお借りして拝読


22022.4.28アップ。


 

 

影別冊 推理特集 1960年/昭和35年

◆影別冊 推理特集1960年/昭和35年◆

●死の影 影丸譲也 50p

 香港より船で日本へ帰ろうとしていた男は、チケット取りに困っていた。幸運にも黒沼と名乗る男に、自分の代わりに乗船してもらえると助かると言われ、乗船切符を譲ってもらえる。しかし、その黒沼と名乗る男は、その直後に謎の男に『ナイフ投げ』餌食となって殺されてしまうのだった。とにもかくにも、黒沼の譲ってくれたチケットで日本への航路の旅に就いた男であったが、命を狙われる事になってしまう。男は無事日本へ帰れるのか?黒沼を殺したのは誰か?そして黒沼の正体は・・・・。

 主人公である男の素性が明かされないまま、話しが進んで行くことに違和感を感じるのだが、船旅の雰囲気も良く出ており、影丸譲也らしい手堅くまとまった作品と言えるだろう。影丸同様に、日の丸文庫で多くの作品を手掛けた『山本まさはる』を思い起こさせるような雰囲気も感じます。

●コマ漫画 奥山洋介 3p

 この作者は全く知りませんでしたが、手慣れた感じで、安心して読めます。

●二重瞼/ふたえまぶた 桑田良一 120p

 のどかな田園風景の続く農村で殺人事件が発生する。殺されていたのはとある大企業の社長であった。故人の経営する会社の社員たち、そして故人の息子、疑わしい人物は数名ほど居る。事件の解決に挑む立花刑事の推理の行方は?

 作者の桑田良一さんは、何作か拝読したこともあり、知っていましたが、経歴は不明です。(おおざっぱな検索では、かかってきません)。わたくしハクダイ的には、『類型的な絵柄が思い当たらない』なのですが、旧世代の漫画家さんという印象です(当てずっぽうですが)。手塚治虫フォロワー以降の洗練された絵?からはほど遠い・・という感じでしょうか?あくまでも個人の感想ですが。

 いわゆる推理小説というものは全く詳しくないのですが、120pという多めのページを使って、犯行の詳細、犯人の仕掛けたトリック、その他もろもろの伏線等々をじっくりと描いており、この当時の推理モノ漫画としては、かなり高水準にあると言えるでしょう。ハクダイは全く着いていけず、申し訳ないですが、斜め読みになってしましたした。タイトルの二重瞼(ふたえまぶた)が犯人に迫る重要なキーワードになっています。

● 電話は夜鳴る 山森ススム 20p

扉に「劇画工房」と記載あり(劇画工房マークあり)。

 銀行強盗に成功した男。彼は、まずはゆっくり休もうと床に就くが、興奮のため寝付けない。そこへ電話が掛かって来る。『あなたが銀行強盗をして大金を手に入れたのは知っていますよ』と電話の主は言う。そして更に続けて「ばらされたくなかったら、口止め料として盗んだ金の半分を、寄こしなさい」と男に迫るのだった。

 銀行強盗に成功した男の焦燥感を丁寧に描いており、山本ススムお得意の心理スリラー作品と言えるだろう。電話の主の正体が最後まで明かされることなくエンディングを迎える、奇妙な読後感が残る作品です。

●巻末広告等


 

 本書は山森ススム先生よりお借りした貸本漫画の一冊です。


2022.4.20アップ。

影18集 日の丸文庫

◆探偵ブック 影 18集◆

目次は巻頭のさいとう・たかを作品の後にあり、山森作品の前にあります。

『黒い子猫シリーズ X ラメラ さいとう・たかを』 16p

 狂気とも呼べるような執着で研究に打ち込む滑博士(ナメラハクシ)。旧友である北川博士が、莫大な研究をつぎ込んでいる滑博士の身を案じて訪ねてくるが、『この薬が出来たら・・・・」と北川博士の心配も全く意に介さない滑博士であった。研究所で夜を過ごした北川博士は、滑博士の実験室のドアの鍵穴から、身体が溶け出して透明人間となる滑博士の姿を見るが・・・。透明人間を作り出そうとする滑博士の狂気じみた研究の正体とは?「黒い猫」と呼ばれる少年探偵の推理が冴える。

 滑博士と北川博士の友情もテーマとして内包しており、後味は悪くない作品。この当時のさいとう・たかを作品は殆ど知られていないと思いますが、漫画的な丸っこい絵柄と、単純に形容できない、さいとう・たかをらしさが感じられる絵柄だと思います。

● 空飛ぶネオン塔 山森ススム 21p

 一億円以上が奪われ、行員三十余名が殺害されるという、凶悪な銀行強盗事件が発生する。犯人は三人組のギャングであることは分かっており、非常線が張られるが逃走経路がつかめず、市街地は大混乱。偶然、ギャングと遭遇する仁とその友人は、警察に、ギャングの居場所を教えようとするが、居場所を知られたにも拘らずギャングたちは余裕しゃくしゃくの様子である。ギャングたちが利用しようとしている逃走経路(方法)とは?

 ロケットで逃走する、というアイデアを生かし切れておらず、幾分消化不良感が残る作品だが、山森作品の軌跡をたどるという点では興味深い作品。

 

 ● 続まだら蜘蛛 佐藤まさあき 25p ミステリーシリーズ第四話と表紙に記載あり。

 ● おれはギャング⑥桜井昌一 1p 4コマ漫画が2本

 第二次世界大戦中、ビルマのある部隊にいた三人の男たちは、墜落した飛行機の中にあった宝石を偶然手に入れる。まだらの毒蜘蛛に噛まれた遠野を見捨て、更に遠野の分の宝石も奪って逃げてしまう二人の男。16年後、まだら蜘蛛を自称する怪しげな男が、復讐のためにと生き残った二人の前に現れる。

 前回分の謎解き的な感じなのが残念。前回分のまとめは絵物語的な手法を取っているのも興味深い。

 物語自体は、結構込み入っているにもかかわらず、破綻なく進み、復讐モノ、謎解きモノとしてよくできており、ストーリー展開の巧みさに定評があった佐藤まさあきらしい作品。いわゆる書生風スタイルの植村謙二探偵の造形には確かなモノがあります。佐藤まさあきといえば独特の目つきの男(いわゆる三白眼の男)で知られますが、この当時は、まだ、この目つきの男は登場しません。個人的には、まだ丸みが残っていた時代の佐藤まさあきの絵柄好きですね。

● クイズの部屋 消えた五千円札 桜井昌一 下半分のページで16p

 銀行強盗に成功するも逃走中である三人。奥深い山へ逃げ込み一夜を明かすが、仲間割れが起こりそうな気配がする。盗んできた金の一部が無くなっているのに気付いた男は・・・

● 蛇性の魔女 山口よしひろ 30p

 コーヒーを食堂で飲んでいた白百合健一郎は、「蛙を一人前」持って来てと奇妙な注文をするマスク姿の女性を見かける。機転を利かした店員は「当店自慢の牛の舌」を出すが、マスクを取った女性の口には恐ろしい牙が二本。その女は復讐を企む恐るべき「蛇女」であった。事件の全貌と蛇女の正体に迫ろうと精力的に動く白百合健一郎。単純そうな事件に見えたが、真犯人の真意は意外なものだった。

 作者の山口よしひろさんの名前は全く知りませんでしたが、手塚治虫の熱烈なフォロワーと言えるでしょう。手慣れた感じで、それなりに実績のあった方かもしれません。謎解きモノとしては結構複雑な構造を持っており、事件を解決するのは白百合健一郎の妹であったりと、なかなか一筋縄では無い読み応え十分の作品に仕上がってします。劇画工房の作家たちが目指したような「新しいマンガ」志向のようなモノは希薄ですが、完成度は高い作品です。

● 二人の男 有川栄一 上半分のページで16p

 警察に追われている二人の男は実の兄弟。弟は麻薬王になってやると豪語するが、兄は弟には真っ当な道に進んでもらいたい。兄弟は激しく言い争うが・・・。

● 地獄特急 くぼもとみのる 21p 表紙にスリラーとある。

 都内の銀行を襲撃し銀行強盗に成功した二人の男は、羽田空港で小型飛行機を乗っ取り逃亡を企てる。犯人に脅された二人の操縦士の操縦する小型飛行機は三原山に向かう。三原山の火口付近に不時着した小型飛行機であったが、三原山の噴火が数時間後に迫っており、故障したエンジンを直し、三原山を離れなければならない。犯人二人、そして操縦士二人は、この危機を脱することが出来るのか?

 くぼもとみのるは影丸譲也(1940生まれ)の本人名義であるが、劇画家として大成する才能の片りんが伺える初期の一篇と言えるだろう。この当時若十八歳。臨場感に溢れたドラマが展開されるが、犯人二人は3〜4等身で描かれており、自らの表現を模索していた時期であると推測されます。今更ですが、影丸譲也という劇画家・マンガ家の存在の大きさを実感しています。


 

 本書は山森ススム先生よりお借りした貸本漫画の一冊です。


 

2022.4.18アップ。


 

貸本漫画短編誌『黒い影』三洋社を4冊読む機会に恵まれました。 

 

   三洋社の貸本漫画、いわゆる短編誌『黒い影』 を4冊ほど読む機会に恵まれました。昨年2021年11月に山森ススム先生宅を訪問した際、御貸し頂きました。1,2,5、そして別冊1の4冊。4冊全て定価は150円で、奥付に編集者が記載されている場合、編集者として長井勝一の名があります。刊行時期については、上記4冊は全て1960年(昭和35年)と推察されます。三洋社を興し、その後青林堂を設立しガロを創刊させるまでの経緯については、長井勝一の著書「ガロ編集長」に詳しいです。三洋社は白土三平・忍者武芸帳の刊行元であり、貸本漫画を語る上で外せない重要出版社ですが、出版物の内訳については、あまり知られていないように思います。せっかくの機会ですので、以下わたくしハクダイなりに、まとめてみました(的外れな事を書いているかもしれませんが)。作家さん等の敬称略は御容赦下さい。皆さんの参考になれば幸いです。

◆総括

(4冊を読み終えて)。一番最後に配置されるべき文章かもしれませんが、最後まで読んで頂けるとも限らないのですし、結論は先にという考え方もあることですし。

・関西の劇画工房系作家(及びそのフォロワーたち)と、東京の作家がバランスよく配置されている。

・比較的、豪華な執筆陣と言えるだろう。劇画工房に所属していた作家たちの原稿料は、相場としては高めであったと思われます。

・読み応えの多い作品が多く、当時の貸本漫画業界にあっては、かなり高水準にある短編誌シリーズである。

・関西よりの上京組(≒劇画工房)に対しての東京の作家ということになるが、劇画工房系の作家の亜流では無い個性豊かな作家を起用。つげ義春・忠男兄弟、永島慎二、フカイヒロー、石黒昇。1960年(S35年)当時、山森ススムは京都在住、影丸譲也は大阪在住。

・誌名の「黒い影」は、日の丸文庫の「影」を意識して付けられたものであろうが、本家・影に匹敵する存在(あるいは凌駕していると言っても差し支えないかもしれない)。

・貸本漫画の世界は、いい意味でも悪い意味でも『何でもあり』、『玉石混交』、『作家にとっても出版社にとっても参入障壁が低い』業界だが、編集人の明確な意図が存在するように思える。編集者・長井勝一の力量を伺いしるには十分過ぎる短編誌であると言えよう。

◆創刊号◆ 

 アクションブックと副題あり

 

狼の礼服 さいとう・たかを 約24p(冒頭数p欠損のため不明〜推測)

・扉欠損で、プロダクション制作に関するクレジットが在るのか無いのかなど不明。

・殺し屋同士に決闘させる、が作品のキーとなる作品だが、決闘という形式も狼には不要である、という非情さ〜虚無を描いた作品。正義の味方的な顔つきの殺し屋が実は・・・という意外性も作者の狙いであろう。礼服は形式的なことを指している(比喩)。

みな殺しの歌 佐藤まさあき 50p

・扉に記載 非情!!一人の殺し屋をドライなタッチで描いたハードボイルドの傑作。

・走行中の首相の乗る自動車を銃撃でパンクさせ、首相をあっけなく撃ち殺す殺し屋。命乞いする居合わせた目撃者である運転手も、容赦無く撃ち殺すのであった。暗殺の依頼者である次期首相と呼び声の高い政治家鬼頭は暗殺の秘密を消すために、殺し屋のもとへ複数の刺客を送りこんで来る。

・無関係の全く落ち度のない人間でも目撃者であるという理由で容赦なく殺してしまう男であるが、子どもに対して見せた甘さが命とりになってしまうエンディングに佐藤まさあきの「表現者の核」を見ることができると思います。

・この作品は、リメイク版が幾つか存在すると思われる(最低1つ、または2つ以上)。これこそがオリジナルと思われる。扉にはドライなタッチとあるが、現在の視点からすれば全然ドライでも無いですし、いや数年後でさえ、生ぬるく幹事らエル表現であったかもしれません。ですが、佐藤まさあきにとっては、エポックメイキングなり創作上の転換点となった作品だったと想像します。

いつか地獄で 影丸譲也 40p

 

・淡々と殺人を犯し報酬を得る。そんな殺し屋の行動をストレートに描くハードボイルド作品。正義と悪というような二項対立も無く、在るのは殺し屋としての生きざまだけ。

・さいとう・たかをタッチが強く、そのフォロワーであるとみなせる絵柄だが、後年の雑誌へ描くようになってからの影丸譲也独特の筆致も当然ながら感じられる。背景は辰巳ヨシヒロの影響を感じます。

らせん階段の男:辰巳ヨシヒロ 41p

・扉に記載あり 独立劇画プロ

・日本物産でまじめに働く浮浪者の出自を持つ男は、恩人である社長と共に、逃走中の銀行ギャング団(四人組)に人質として虎和捕らわれてしまう。ギャング団の四人も特殊な事情を抱えており、連帯とは程遠い状況の中、警察署長と人質解放と逃走方法について交渉するギャング団。果たして、人質とギャング団の運命は・・・。

・辰巳ヨシヒロ作品としては、構成が雑な作品であると考えます。人間ドラマ、痛快アクション、非常さ重視のハードボイルド、これら三つのどれでもあって、どれでも無い、そんな印象です。

・劇画工房を脱退した辰巳ヨシヒロは、一時期、短期間ではあるが「独立劇画プロ」名義で作品を発表している。

黒犬 山森ススム 30p

・扉に記載あり 劇画工房作品(マークもあり)

・ヒ素を病院から盗み出す事に成功した男・井上。井上の兄は立派な屋敷に一人で住む男が飼う猛犬(黒犬)に襲われ、命を落としていた。その犬にヒ素入りの肉を与え続ける事で、犬を毒殺し兄の仇を打つうつもりの井上であった。井上は、ヒ素入りの肉を十数回与え続けることに成功したが、屋敷の男には大きな秘密があった。井上、屋敷の男、そして黒犬、これら三者が最終的に迎える結末は意外なモノだった。

ある刑事の復讐 石黒昇 34p

・組織的な麻薬犯罪と警察の抗争が続いていた。定年間近の初老の原田刑事は、肝心なところで、犯人たちを取り逃がしてしまう。署内で肩身の狭い思いをする原田刑事だったが、その一人息子は大学へ行っていると、部下の佐々木刑事に話していた。しかし、本当のところは違う。その一人息子は件の麻薬犯罪に関わっていて、組織内の者によって殺されてしまったらしい。老刑事原田は死んだ息子の仇を打とうとするが・・・・・。

・人間ドラマとして、巧みな構成で読ませます。この当時のつげ義春作品に近いテイストを感じます。辰巳ヨシヒロ、さいとう・たかを等の関西劇画よりの影響を、東京在住の作家たちが巧みに消化し、独自のスタイルを作っている、という事なのかもしれません。絵柄は、手塚治虫調+関西新興劇画勢のミクスチャーという印象です。子ども向けまんがを脱皮し、オトナの鑑賞に堪える作品になっていると思いますが、当時は、このテイストを理解する読者は少数派だったかと思います。

アルバイト 石川フミヤス 33p

・いわゆるアタリ屋として自動車に自ら接触して見舞金をせしめることで金を稼いでいる高校生・狂田(きょうだ)。彼は、アタリ屋稼業をアルバイトと称し、金を稼いで来いと鬼の形相でせっつく母親に金を渡していた。大事な公金を失くしたとい落ち込んでいる学友の春山に、アタリ屋で稼ぐ事を教える狂田であったが、結果春山は自動車事故で命を落とすことになってしまう。自席の念に捕らわれる狂田であったが、アタリ屋をやめる事は出来ない。しかし、最終的に狂田は・・・・。

・狂田、きょうだとは、またインパクトのある名字ですが、他の石川フミヤス作品でも使われていたような記憶があります。

 ◆第二号◆ 

 左より、表紙(カバー欠)、扉部分、奥付ページ

●表紙(原英夫)、扉・目次(さいとう・たかを)

目次のページ(見開き)
目次のページ(見開き)

●定価150円 編集者長井勝一 奥付には黒の影②と記載。

死顔をケトバセ!! さいとう・たかを 27p

・扉に記載あり「さいとう・たかをプロダクション作品/本格ハードボイルド」あり。

・犯罪組織で活動する男たち・・・・非情、残忍、狡猾、そして忠誠。正義と立身の狭間で揺れる男たち。さいとう・たかをの流麗なタッチが非情に男たちに良く似合う。

非情 つげ義春 35p

・麻薬取引を巡る犯罪組織と警察組織の攻防。取引に現れた謎の女性は、関西の殺し屋鮫島兄弟の弟こと通称「ハンサムのケン」だった。鮫島兄弟との大きな因縁を持つサムという謎の男の正体は? 正統派エンタテイナーとしてのつげ義春の特徴が出ている佳作。

雨ん中 都島京弥 46p

・扉に記載あり ヒマナぐるうぷ作品(マークもあり)

・生まれ故郷である長崎県対馬の地に、家出から戻って父にお詫びを入れる伸二。伸二は、東京で何かのトラブルを起こしてきたようである。対馬で大掛かりな人身売買が行われているという噂は伸二の帰郷と何か関係があるのだろうか?絵柄は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、構成は見事。

落ちる 山森ススム 30p

・扉に記載あり 劇画工房作品(マークもあり)

・エンゼルホテルに宿泊していた男はトイレに起きた際、自室と間違って他の部屋へ戻ってしまい、そのベッドで寝入ってしまった。その部屋の宿泊者が戻らないうちに部屋を出ようとするのだが、宿泊者が知人の男性と一緒に部屋へ戻ってきてしまい、ベッドの下に隠れざるを得ない状況に。入ってきたその二人の男は争いを始め、ベッドの下で息を潜める男。結局殺人事件に巻き込まれてしまったた男の運命はいかに。何気ない日常の裏側にある恐怖を描かせたら山森ススムはウマい。現在のマンガ読みの目からすれば、未成熟と感じるかもしれないが、発表当時はかなりインパクトがあったと思われます。

ゲンコのおかえし 石黒昇 46p

・扉に記載あり 手書きで「あくしょんまんが」

・「アクション漫画」なり「アクションマンガ」とせずに「あくしょんまんが」とするところに作者石黒のこだわりを見ます。マンガとカタカナ表記するのは、この当時は一般的では無かったかもしれません。手塚調の従来の漫画とさいとう・たかをを中心とする劇画調の絵がウマい具合にミックスされていると思います。犯罪やアクションを描けばイイ?という風潮に素直に乗れなかったのかと思います(辰巳ヨシヒロ、松本正彦ら少なくない作家さんが突き当たった壁かもしれませんが)。殺伐とした雰囲気を無理にでも出したいという作者の意図を感じるのですが、これは作者のニヒリズムの発露かもしれません。

友情 石川フミヤス 33p

・扉に記載特になし。手書きで作品名と作者名。

・石川フミヤスと言えばさいとうプロダクションの一員と認識する人は少なくないかもしれませんが、この当時は未加入のようです。プロダクション加入後も単独名義での作品もあったでしょう。本作品は、ちょっとした変装により危険な奴と思わせることで、恐喝されている友人の窮地を救うという話しです。馬鹿馬鹿しいと思われるかもしれませんが、嫌みの無い実直さに溢れた石川フミヤス作品だと、不思議に説得力があります。

◆第5巻◆

(5号相当、なぜか巻標記) 

・目次と扉は永島慎二によるものと推測(クレジット無し)

・巻末の「チャランポラン兄弟 宇田川マサオ」の広告が興味深い。

金〜おあし〜 永島慎二 70p

・扉に記載あり MOOD COMIC  /PRESENT BY むさしの漫画ぷろだくしょん/1960・7作品。

・大学生山野進は、資産家のおじの経済的支援を受けていたが、通学せずパチンコ三昧の生活をしていた事もあり、突然支援を打ち切られてしまう。全く意に介さない山野であったが、こじき同然の男にある頼み事をされる。こじき(同然の男〜あるいは浮浪者に近い?)はデリケートという名の犬を大事にしていたが、その犬が死んでしまい、大きな喪失感にあった。山野はその頼みに応えようとするが・・・・・。

・昭和35年当時の大学生もパチンコしたんですね?とか意外な発見がありますが、金〜moneyという存在に正面から表現者として格闘を挑む二十代半ばの永島慎二の存在が眩いです。

・次号予告として真実(まこと)という作品の下段2/3ページを使った広告が本文に挿入されている。文学青年つげ義冬(よしふゆ)という人物が主人公の作品のようです。以下、文章部分をそのまま引用する。 文学青年つげ義冬くん 彼はなぜそのことをとい青春をくらいかんごくの中ですごさなければならなかったのか!なんと真実を口にしただけであった。

みな殺し 山森ススム 30p

・扉に記載あり 劇画工房作品(マークもあり)

・北大路竜之介ら四人の男たちは、銀行強盗を計画していた。北大路の弟は怪我をしているため、他の3人ほどの働きが出来ない 。北大路は弟をかばうのだが、他の二人は納得できない。そんな状況下、その弟は何者かに殺されてしまう。果たして弟を殺したのは誰か?結局壮絶な仲間割れが進んでいくのであった。北大路竜之介を含む三人の悪人たちの仲間割れが、丁寧な駒割で綴られる。

こいつは罠だ フカイヒロー 36p

・イラスト的というか、この時代のアクション劇画とは一線を画すタッチで描かれている。この当時の貸本漫画にあっては独特な絵柄、フンイキを持つ作品だと思う。絵柄はアメリカンコミック的な要素を多分に感じさせるものであり、ストーリー展開も独特。

・特に興味深いのは、一般には手書きで描かれる場合が多い擬音(効果)が、全て小さな活字で表現されている事。飛行機の動きは「活字で・ゴー」、活字でブルル」。拳銃も弾も「活字でズダダン」、「活字でガガーン」。イラスト的なモノを意識しての事だと思うが、このスタイルでの作品、もっと読んでみたいものです。

半顔の鬼 大田春彦 42p

 

・この作家さんは初見。旧世代〜この場合は手塚チルドレンより前の世代という意〜、と推測します。達者な絵だと思います。ベテランの「絵描きさん」と呼びたいところです(勝手なイメージですが)。

・大戦中の供出宝石類の横領に絡む復讐劇が基本枠組みとなる作品。供出品をうまいこと入手し、それを資本にして成功者となった・・・そんな噂が当時はあったのだろう?真偽のほどは別として。レトロなフンイキが味わい深い作品です。

野郎は皆んな昇天しろ 鬼堂譲二 27p

・鬼堂譲二1960.7.23作品と記載あり(最終ページ欄外下段)。

・この作家さんについては知っていた。劇画工房の作家たちのフォロワーという理解です。貸本マンガから雑誌への移行には対応できなかったか?(情報不足で判断出来かねますが)。

◆黒い影 別冊①◆

 

 左より、表紙、扉部分、表紙と裏表紙

●表紙:コンタロー、目次:永島慎二 と記載あり。奥付部分は欠落のため確認できず。

 

ステキなお返し 影丸譲也 38p

・扉には 1960.4 J・K  と記載あり。

・凄腕の殺し屋である堂本。大きな依頼に結果を出し、意気揚々と報酬を受け取りに行くのだが、どうも様子がおかしい。組長、ボス、それぞれの思惑が絡むなか、壮絶な銃撃戦が繰り広げられる。瀕死の身体で、ステキなお返しをするよと、ダイナマイトで大爆発を起こす堂本であった。

・さいとう・たかをタッチが色濃くでた作品と言えるでしょう。黒い影の看板作家がさいとう・たかをであるという事であえてさいとう・たかをタッチに寄せたのでしょうか?破壊願望、破滅願望に訴えるという点では成功している作品かと思います。

●狙われたツバサ フカイヒロー 40p 

・航空機のテストパイロットのテスト中の死亡事故を巡って探偵・大町五郎が活躍する。

・昭和35年作品としては、SF的で先鋭的な作品と言えるだろう。未来志向、都会的なセンスは漫画雑誌含め、この当時は殆ど類型が無いかもしれません。5集収録の同作家の「こいつは罠だ」同様、擬音(効果)は全て小さな活字で表現されている。

●新人原稿募集のページでは、さいとう・たかを先生、白土三平先生方の続く有名作家育成の為、とあり、この両作家を三洋社の代表作家認識していることが伺える。

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時刻百キロの凶器 山森ススム 30p

・扉に記載あり 劇画工房作品(マークもあり)

・銀行強盗を働き大金を得たものの、強盗の悪事をネタに強請られて(ゆすられて)いる二人の男。何度もゆすられてはたまらないと、その男を殺人を目論む二人が凶器として選んだのはオートバイ。目的は完遂するものの二人の男に待ち受けていたものは。

・作者山森ススムのバイク乗りとしての経験と知識が生きた作品。当時はかなりの高級品であっただろう外国製バイクを所有していた山森ススムだけに、疾走感のあるバイク走行シーンには特筆すべきものがある。複数ページ数を使い大胆に描写しており、ここまでのバイクシーンは、これまで描かれた事が無かったかもしれません。

殺し屋志願 つげ忠男 30p

・扉には、つげただお作画と手書きクレジットあり。だが、目次にはつげ忠雄とある。(これは忠男の誤植だろう)。

・腕利きの殺し屋鮫島。段々その報酬は上昇し、雇い主である松浦組のボスからも嫌な顔をされてきている。一方鮫島は殺し屋になりたいという若い男に「殺し屋・教育」を施していた。鮫島を暗殺しようと、松浦組のボスはが刺客として差し向けたのは、鮫島が教育していた若い男だった。師弟関係にあった二人の勝負の行方は。

・19歳前後の作家の作品としては驚くべき完成度の高さだろう。構成の巧みさ、そして兄つげ義春の影響を感じさせはするが、オリジナリティの高い画風。この作品をオリジナル貸本で読めてラッキーです。

白い花 前川浩康 12p

・扉には MOOD MISTEY とある。

・白い花、呼子の二作は第一回新人王当選作品(賞金一万円)のようである。

・獅子舞い(あるいは漫才といわれるものか)の携わる男と子供(三吉)の二人連れは、雨宿りのために、ある小屋へ逃げ込む。そこには一人の少女が居て、摘み取ったと思われる花を整理していた。そこへ、へび(まむし)が現われ、怯える三吉と少女。そして、まむしは・・・・。怖いテーマ、ハードなテーマの作品ですが、おとぎ話的としても読める一方、不条理作品としても読めるでしょう。初期のガロに載っていそうな雰囲気を感じます。

呼子 前川浩康 30p 

・乗合バスがバックする際には車掌の女性が、バスの外から呼子を吹いて進路誘導を行ったのですね。その進路誘導作業が事件の重要なカギとなる殺人が絡むミステリー。娘の父への情愛を背景に詩情とミステリーが交差し、かなりの完成度の作品。

・白い花、呼子の作者前川浩康については、寡聞にして全く知りませんでしたが、児童漫画、童話、絵本という言葉が似つかわしいかもしれません。令和時代のアックス(青林工藝舎)に掲載されていても違和感ありませんね。この作家さんが、この二作で漫画制作を辞めていたとしたら残念な事です。

人間洗濯機 宇田川マサオ 1p

・8コマ漫画の体裁ですが、横に読み進める形式です。令和の時代には、あまり見られなくなった絵柄かと思いますが、個人的には嫌いじゃない絵柄です。

石川フミヤス ストレートの鉄 約24p(終盤欠落のため確認できず)

・扉には、アクション劇画、右近鉄三郎活躍 とある。

・刑務所から出て来たばかりの男が、強力なパンチを武器に大暴する痛快アクションといったところ。エンターテイメントに徹しており、嫌みの無いキャラクター右近鉄三郎が頼もしい。


2022.3.17アップ


 

影30集 日の丸文庫

貸本漫画 影・30集 日の丸文庫を読む機会に恵まれました。個人的な印象ですが、影は古くなればなるほど、番号が若いほど、アクセス(読むなり購入するなり)が困難になります。

・発行年は昭和34年の3月頃と推測。山森ススムと桜井昌一の両作品には劇画工房マークがありますが、松本作品には無し。松本正彦の劇画工房への参加は若干遅れたわけですが、松本加入前の「劇画工房七人体制」の時期となります。

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・影丸譲也(1940ー2012)は19歳頃の作品となります。劇画工房同人より3〜5歳程度若いわけですが、先行した作家たちの良いところを貪欲に吸収して急成長していた時期かなあ?と思います。殴り描きに近いとでも言ったらいいのでしょうか?独特のタッチを持った作家さんだったと思います。テクニックがあった上での殴り描きタッチ故に、フォロワーが出にくかったように思います。キッチリ描く方が易しいのかもしれませんね。荒々しさを出すための独自の筆致(タッチ)であり、殴り描きという言い方は好ましくないかもしれませんげ。女性の描き方は、関谷ひさしの影響も伺えます。影丸譲也(穣也)は、原作付きの作品が多かった作家というのが一般的な見方であろう、と思いますが、原作無し作品にも、良い作品が多いと思います。

・水島新司(1939-2022)

 この時期は、水島さんにとっては、『大阪日の丸文庫で働きながら、漫画家のキャリアをスタートさせた時期』ということになるのでしょうが、その後約60年近く、連載を持ち続けるA級クラスの商業作家として活躍続けるわけですから、この才能に、この時点で注目できた、というのは実はすごい事なのかもしれません。

以下、各作品を紹介します。

(1)アンソロジー駒画 雨降る夜 松本正彦 18p Ⅱ.59と表紙に記載。劇画工房マーク同様に、駒画のシンボルとしての「マーク、図案」があります。

 ・ストーリー:東京都内のアパートで大学受験を控え勉学に励む主人公中野治。雨の降るある晩、小学校で親友だった国分寺が中野の前に突然現れる。すっかり面影が変わってしまったが国分寺であったが、中野は国分寺を精いっぱいもてなす。が、翌朝、国分寺は忽然と消えていた。国分寺の実家に手紙を送って彼の現況を尋ねてみると国分寺は最近自殺していた事が分かった。雨の夜、中野の前に現れた国分寺は幽霊であり、中野と国分寺が小学校の卒業時に交わした約束を果たすために姿を現したのであった。

・解題:古臭い印象は免れないものの、情感漂う作品。原案に近いアイデアの小説があるような気がしますが、この味わいは松本作品ならでは。

(2)クイズ部屋 私は殺される 桜井昌一 18p(+解決編2p) 劇画工房マークあり

 ・ストーリー:土蔵にこもり切りでほぼ外へ出ない生活をしている初老の男。「あなたは身内のものに狙われている、気を付けよ」という巫女の神託を信じ、怯えながら生活しているのだった。男は国宝級の雪舟の掛け軸を所有しており、医者の武田は、その掛け軸見たさに、男を度々訪れている。男の二人の息子は父親に借金を申し入れたいが、巫女の神託を信じる男は二人の息子とは会おうともしない。息子二人は土蔵の合い鍵を作り、土蔵に入り込む事に成功するのだが、頭に銃弾を受けた父の遺体を発見するのであった。犯人は誰か?

 ・解題:いつも感じることだが、桜井昌一作品は、素直に(字面通りにというのも変な言い方だが)解釈、受け取っていいものなのか悩ましい。斜め上

(3)アクションスラリー 末路 影丸譲也  59.3と表紙に記載あり(1959年3月制作の意であろう)

 ・ストーリー:五人ほどの男たちが、一人名の男を追っている。どうやら犯罪組織内での仲間割れのようである。追われた男は、とある家に身を隠すことに成功するが、その家に住む少年は、兄を亡くしたばかりで、その遺影の前で線香が煙を上げていた。そして少年の兄は麻薬Gメンであった。少年は医者を呼ぶなど親身になって男を助けようとする。大がかりな麻薬取引を巡り、少年と追われていた男の人生が交錯していく。

 ・解題:上手いなあ、と思わせる。昭和16年生まれなので若干18歳。先行の先輩たち〜劇画工房同人など、ひとりひとりの良さを取り込み見事に消化していると、言えるだろう(まだ途上なのかもしれないが?)。

(4)題名募集作品発表 スリラー小劇場「道連れ」 山本まさはる 下半分のみサイズで16p

 ・ストーリー:胃がんで余命いくばくも無いと医師に宣告を受けた男は、どうせ死ぬなら、と多くの悪事を犯している旧友の男を道連れにしてやろうと一計を案じるのであった。

(5)題名募集作品発表 僕に過去がなかったら 水島新司 43p 34.2.20と記載あり。

・ストーリー:それぞれ浮浪者だった三人の男は、悪事を働いていたものの、懸命に生きて来た。前科がつかないようにと、注意していたものの組織に属する身ではどうにもならなかった。懲役1年の刑に服した後出所した三人は、まっとうに生きると近い、二年後の再会を約束してそれぞれの道を歩むことにするのだが・・・。

・重いテーマですが、希望を抱かせる水島節は、この時点で既に完成していると言っても過言ではないでしょう。

(6)OK劇場 おばたかづひろ 奇妙な男 上半分のサイズで16p

・ストーリー:とある洋館で、ボロつぎがたくさん施された衣類をまとった男が倒れているのが発見された。洋館の当主は男に問いただすが、男自身、どうしてここで自分が倒れているのかが分からない。だが、当主が男を尋問していくに意外が事実が明らかになって行く。

(7)新作長編80枚の代力作 恐るべき予言 山森ススム ページ欠落のため詳細のページ数不明。劇画工房マークあり

・ストーリー:父の言いつけで銀行の貸金庫へ預けてあるダイヤモンドを取りに行く少年は、未来の事が分かるという不思議な雰囲気の男と出会う。その不思議な男は、少年の父がライオンに噛まれて命を落とすだろうとの予言をする。少年と父は全くのデタラメであると思い込もうとするが、だんだんと不思議な男の言葉に捉われていく。

・解題:山森ススムらしい、心理スリラー。北大路竜之介の怪演とでもいうべき独特の佇まいが印象的。また、自動車で移動するシーンの臨場感はこの当時の漫画表現にあっては特筆すべきレベルであると思う。

2022.4.11アップ。(山森ススム先生蔵書を使用して作成)