貸本時代の石川フミヤス
1.比較的入手しやすい最初期の2作品
(1)恐怖の銃弾
石川フミヤス /8p /収録:完全復刻版 「影」「街」創刊号/小学館クリエイティブ発行/A5判/2009年(H21)/箱入り仕様
貸本マンガ誌の「街」創刊号/1957年(昭32)4月、に収録された作品の復刻版。判型も刊行時同様にA5判というのが嬉しい。
概要登場人物たちの名前は、ダム、グリーン、ジム。米国の田舎町を舞台にしたと思われる作品。銀行強盗を扱ったちょっとしたサスペンスという印象の作品だが、特筆すべきはその絵柄である(あくまでも私見だが)。この「街」創刊号には草川秀雄、辰巳ヨシヒロ、佐藤まさあき、久呂田まさみ、石川フミヤス、松本正彦(以上、掲載順)の6名が寄稿しているが、その中でも際立って現代的なセンスを感じさせるのが石川フミヤスの画風である。「古臭い」という形容が6作品中で一番あてはまらないのが石川作品かもしれない。
(2)青い海
石川フミヤス /35p /アンソロジー「幻の貸本マンガ大全集」文藝春秋編/文春文庫ビジュアル版/A6判/1987年 /(※初出は貸本マンガ誌「ゴリラマガジンNo.47」/さいとう・プロ/1966年(S41)/A5判
概要理想の女性「美枝」を夢想して、幸せそうに生活している武夫。彼の「夢想」の中では、美枝と武夫は青い海の中を楽しく泳ぎ回るのだ。武夫は、幻想と現実の区別がつく、分別のある青年ではあるが、美枝がどこかに実際に存在する、という想いに強く襲われることがしばしばある。 そんなある日、電車で出かけた武夫が、とある海辺に立ち寄ると……。 ファンタジーとして描かれた作品だと思うが、50年前の作品とは思えない普遍性がある作品である。甘ったるい都合の良い夢想的な作品のようでいて、きちんと地に足が着いた現実的な世界観が構築されている。石川フミヤスらしい作品である。
2.管理人ハクダイのオススメ~最初期の3冊
「渦巻く炎」と「狂った果実」はハードカバー版で、若干サイズに違いがあるが、基本的にB6判。 「殺人鬼」はいわゆる「赤本」に近いスタイルか?ソフトカバーで、いくぶんチープな作りであるといえよう。
デビュー作とされている「復讐の鬼」と「渦巻く炎」の刊行は、ほぼ同時期とされている。 「殺人鬼」の絵柄がこの3作品では、一番古い印象だが刊行年は不明。デビュー作とされている「復讐の鬼」より古い時期に描かれた可能性もある。
(1)殺人鬼
石川フミヤス /ミナト出版社/100円
右側の画像は左右のページでフキダシ内の文字書体が異なる。右は活字フォントだが、左は手書き。この作品の制作時期が気になるところだ。
(2)渦巻く炎
石川フミヤス /単行本/120p/日の丸文庫/B6判
左は作品表紙、右は作品扉。表紙と扉の筆名は「石川フミヤス」だが、背表紙は「石川文康」。また、背表紙には”217″の数字。作品自体と表紙のコンセプトが異なっている。「現代物スリラー」というコンセプトの作品と思われる。
少年少女たちの生活ぶりが生き生きと伝わってくる作品である。ドキュメントタッチの作品の描き手としては石川フミヤスは貸本マンガ界随一といえるのではないだろうか。デビュー間もないこの作品からも、そんな”石川テイスト”を感じさせる。
(3)狂った教室
石川フミヤス /単行本(120余頁)/セントラル文庫/B6判/130円
「狂った教室」は1958年(昭33)頃の作品と推測される。巻末の著者メッセージにて、”中学生の非行を中心に矛盾した社会に生きる少年達を描いたものです”と著者自身が記載しているとおり、社会性の高いストレートな青春物である。