辰巳ヨシヒロのギャグマンガ、と聞くと首をかしげる向きも多いでしょう。確かに、辰巳≒劇画 としても間違ってはいないでしょう。ですが、2003年に青林工藝舎より刊行された『大発掘』の巻末に収録された辰巳氏によるあとがき的な寄稿分「フェイドアウトの作品群」には、次のような一文がある。
もともと私はギャグマンガ家になりたくて、修行に励んでいたのだが、天才手塚治虫に勧められて、ストーリーマンガに転向した経緯がある。貸本で失敗した「劇画」を、さらりと捨てて、ギャグマンガ家に転ぶのも一興のような気もしていた。
この一文の前段で、貸本漫画が壊滅して失業状態となり、週刊誌へ活路を見出すとき、「明」と「暗」の分水嶺、すなわち「ギャグ」と「劇画」の分水嶺に立っていた、と書いています。まあ、要するにマンガ家としてのサバイブを考える場合、ギャグの道も選択肢とにあったという事でしょう。
そして、この『大発掘』あとがきでは、小さなコマではありますが、ギャグタッチの未発表作(81年頃か?)として7ページの小品を、本文の上部に、欄外図版的に、掲載しています。
さて、この「ギャグぎゃぐ大行進」ですが、全20ページです。
●PART1「パチンコ命」として、1ページモノが5本、4ページモノが1本、トビラを入れて全10p。
●PART2「すもう大好き」として、1ページモノが9本、トビラを入れて全10p。
全作品、いわゆる、同じコマの大きさで描かれる4コマ漫画ないしは8コマ漫画という体裁では無く、サイズや縦横比は、一般的なストーリーマンガに近い「コマ割り」になっています。
これが辰巳作品?と違和感を感じる方も少なくないのかもしれませんが、フツウに面白いかと思います。芳文社さんから出てる四コママンガ系雑誌などと相性がいいかも。でも、もう30年も前の事だから、状況が全然違いますね(苦笑)。
しかし、コマはこびの上手さが際立ちますね。1ページ1話という短さだと、余計強調される感じです。