山森進(明日なき男)日の丸文庫 (1)_R1

山森作品紹介02:2021年作成


 作品紹介 初期B6判

◇◇ 明日なき男 日の丸文庫 ◇◇

 

山森進(明日なき男)日の丸文庫 (1)_R1

ストーリー

京都駅に降り立つ探偵勝山勇三。彼は二歳年上の友人・橋本五郎より、ぜひ来て欲しいとの連絡を旅券と旅費同封でもらい、京都へやって来たのであった。友人橋本の住むアパートを訪ねるも、彼は、ちょうど前日二階から落ちて死んでしまっていた。寺で焼香を済ませた勝山にクルマに乗った男が運転席より勝山に話しかけてくる。助手席に座った勝山に、男は「自分は西陣署の刑事・西村であり、旅券旅費同封で京都へ加山へ来て欲しい旨連絡したのは、実は自分であった」打ち明ける。西村は勝山勇三の名探偵ぶりをよく知っており、橋本の「怪死」とまで言うのであった。京都の街の人々を混乱させている大規模な偽札事件、そして、外科医の失踪が新聞を賑わせている。橋本は、これら二つの事件と関係しているのか?名探偵勝山の推理が冴える・・・。

山森進(明日なき男)日の丸文庫 (2)_R1

 見どころ 

作品見開き扉部分、署名があり1956年(昭和31)制作作品であることが分かる。ミステリー、アクション、探偵モノ、娯楽的な要素を前面に押し出した作品でテンポ良く読ませます。瑞々しさと若さに溢れた作品と言えるでしょう。

 さほど重要な役回りではないのですが二人の女性が出てきてどちらも興味深い造形です。ひとりは全くの端役、お遊び的に出てくる橋本五郎の住むアパートの住人。意地の悪さ?を強調したキャラクター。もう一人は橋本五郎の妹で、勝山とのロマンス的な展開を若干は期待するのですが、全くそういったことはありません。

 アクション映画を紙面に再現する、偽札造りに関わった男たちとの攻防〜追跡劇は多くのページを使いたいへんに見ごたえのあるモノになっています。

 ◇◇ 復讐の部屋 ◇◇

 ストーリー

クリスマスの売り出しのために街頭広告人として働く男。彼は最近まで従業員百名程度の会社で専務として裕福に暮らしていたが、会社が火事となり会社自体が倒産し、今は日銭を稼いで糊口をしのぐ身となっていた。その会社の社長(元)は、会社を失ったものの保険金が入り、それなりに豊かに暮らしていた。

 元専務は、久方ぶりに会った元社長の豊かな生活ぶりに驚き、会社の火事は元社長による放火の類(保険金詐欺目的)ではないのか?という疑念を抱く。

 見どころ 解題

サスペンスドラマ、ミステリーとしては、弱い作品かもしれません。ですが、凶悪犯罪、異常犯罪などの派手な、作劇上の分かり易さから一線を画し、新たな漫画表現を目指したいという、作者の意図を感じます。エンディングにかけての展開は、やや雑な印象は免れませんが、

 作画全体に、黒い部分、陰影部分が、デビュー当時より増えている印象で、手塚的なスタイル、精緻な描きこみが特徴の絵物語的、などの従来のスタイル、どれにも当てはまらない世界が構築されつつあるように感じます。

 デビュー後直後の昭和31年から32年頃の作品と思われます。

 B5判128p、ハードカバー 株式会社暁星 奥付ページの下部部分の丁度、奥付情報の記載された部分が破りとられており、発行日情報などが全く分からないのが残念です。ですが、そのページの上中段部分には「暁星まんがシリーズ(予告)」とあり、5作品(タイトル)が記載、作者として、安孫子山彦、山本一夫、山森進、大竹昌夫、佐藤雅明の名がある。

 ◇◇幽霊列車◇◇

 ストーリー:

突然の暴風雨に巻き込まれた中学生三年生の三人組、伊呂波仁(いうなみひとし)、千太、角男(かくお)。三人は、踏切の番小屋に住む踏切番人の茂助という老人の好意で番小屋で休ませてもらう。びしょ濡れとなった三人は、囲炉裏で暖をとりながら、濡れた衣類を乾かすのであったが、茂助じいさんは、踏切と線路にまつわる恐ろしい出来事について語り始めるのだった。この線路は旧軍隊が敷設したものであり山奥の要塞に通じていたという。要塞には、軍隊の倉庫があり黄金を含む数々の物資が保管されていたらしい。線路は旧カーブがあり、そのカーブを曲がり切るには、目視をする助手が必要である。戦後のどさくさに紛れ機関車の運転手と助手が黄金を盗み出したが、欲に目がくらんだ運転手は黄金を独り占めしようと、助手を謀殺するも、助手不在で旧カーブを曲がり切れずに結局運転手も機関車脱線により命を落としたという。そして、あるはずの無い幽霊列車の存在について、まことしやかに語る茂助であったが・・・・。

 はたして幽霊列車は存在するのか?踏切番人の茂助はただの番人なのか、それとも? 空気銃の名手伊呂波仁(いうなみひとし)が見事な推理で秘密に迫る。

見どころ

空気銃の名手である伊呂波仁(いうなみひとし)の射撃の腕前が披露される。ポンプ式空気銃というもので、鳥撃ちに使用されるようで、彼は射撃大会の優勝常連のとのことです。

冒頭、機関車の走行シーンと三人組が嵐の中を駆け抜けるシーンが続くが、今読んでも臨場感あふれる迫力あるシーンの連続です。発表当時(1957年・昭和32年頃?)としては、大胆な表現でしょうが、、ページが多く使える貸本漫画ならではの表現とも言えるでしょう。

 踏切番人の茂助は白髪ですが、キャラクターとしては、『北大路竜之介』になるでしょう。

 ◇◇ 全機突入せよ ◇◇

日の丸文庫 B6判ハードカバー。表紙には「山森ススム」とあるが、背表紙には「山森進」とある、。表紙は山森ススムではない他の方の手によるものと推測(クレジットなし)

ストーリー:

主人公は、少年神風特攻隊の一人であり、十六歳にして戦場に散った四角田角男(しかくだかくお)。日本を離れて米国軍との戦闘に兄と一緒に参加している四角田。(注、戦場がどこであるか問うについては作中出てこないが、いわゆる東南アジアと推測する)。グラマンとの激しい空中戦の末、兄・洋一が命を落としてしまい、失意にある四角田であったが、部隊は内地(日本本土)へ戻るようにとの指令が出る。内地に戻った四角田たちの隊に出た「新作戦・指令」は、『敵の戦艦に零戦ごと体当たりする』というものだった。神風特別攻撃隊と呼ばれることになる、その特殊任務に、一番年少である四角田を初めとし、複雑な思いも抱く隊員たちであった。四角田の母は、長兄洋一戦死の報に悲しみに暮れる。角男と洋一の父も既に戦死しており、角男の無事生還を祈る母は、角男に会いに行くのだが、角男は断固として母には会おうとはしないのだった。出撃命令が出て飛び立って行く角男、そして祖国日本の命運は。

見どころ 

作品冒頭1ページ目に、作者よりの読者へ向けたメッセージがあり、さきの大戦で勇敢に祖国のために戦った少年たちの物語である旨したためている。

現在の感覚をもってすれば、稚拙な漫画表現だねえ、と一言で片づけられてしまうかもしれませんが、家族愛、祖国愛、そして仲間との連帯、シンプルに心を打つ佳品です。昨今の「リアリズム」からすれば、設定や登場人物たちの言動など、ツッコミどころは多いのかもしれませんが、漫画というフレキシブルな表現だからこそ、作者の思いがストレートの伝わるのかもしれません。へたすれば絵空事、茶番になりやすいテーマかもしれないだけに。