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4.ハクダイの蔵書より-松本正彦作品紹介その1

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管理人ハクダイの蔵書から/松本正彦作品の紹介

☆作品紹介1/静かなる男

 松本正彦/ 31p/熱血男児14集/セントラル文庫/A5判/劇画工房マークとⅦ・59のサインあり 

あらすじ明治時代の初期、凄腕の柔道家「嵐竜太郎」は、講道館を訪ねる途上、易者に占ってもらうことになる。易者いわく「出世はするが、あと一息というところでだめになるな」。嵐自身も「ぼくは、最後でひっくりかえる運命にあるんだ」と、占いを素直に受け入れる。嵐は、故郷の八田貝道場を、道場主の娘と同輩に気をつかって自ら出奔したのであった。
講道館に入門を許された嵐であったが、そんなある日、八田貝道場の存亡の危機を知る。体を張って八田貝道場の危機を救う嵐だが、自分の手柄とはせずに、静かに去るのだった。

「静かなる男」の扉ページ。柔道家の主人公嵐の凛々しい姿。
「静かなる男」の扉ページ。柔道家の主人公嵐の凛々しい姿。
回想シーン。
回想シーン。
格闘シーン。
格闘シーン。
セリフのないページ。
セリフのないページ。

解説主人公「嵐」の造形に、松本正彦氏自身がかなりの割合で投影されているのでは?と私は推測している。劇画・マンガの発展に大きく寄与していながら、声高に自分の手柄だと主張しない、そんな控えめな松本氏が作品の中に生きているような気がしてならない。

 

☆作品紹介2/裏窓

 松本正彦/5p/辰巳ヨシヒロマガジン3号/金園社/A5判/制作クレジットなし、Ⅲ・60とサインあり ※この作品は「松本正彦『駒画』作品集 隣室の男」(2009年6月/小学館クリエイティブ)に完全再録されている。

オリジナル版は見開きページから始まる(小学館クリエイティブ版は左ページから始まる)。
オリジナル版は見開きページから始まる(小学館クリエイティブ版は左ページから始まる)。

解説趣向を凝らした8コマのユーモア漫画。3本のオムニバス形式で横に読んでいくスタイル。一筋縄ではいかない捻りのある作風が松本氏らしい。大人の洒落っ気とスマートさが冴える上質な作品であると思う。

 

☆作品紹介3/波止場野郎

 松本正彦/単独作品/136p/セントラル文庫/A5判/170円/ファスト・プロ名義/1962年5月(*1) /ダイナマイト62シリーズ  *1→「5 37」とある。

概要枚戸大吉シリーズ。竜洋丸一等運転士がダイヤモンドの密輸事件に絡み大活躍。港を舞台に、枚戸が拾った捨て子とその母との愛情ドラマなども交えた、読み応えのある作品に仕上がっている。

単行本「波止場野郎」表紙。
単行本「波止場野郎」表紙。
扉ページ。
扉ページ。
見開きの扉ページ。
見開きの扉ページ。
淡々と進むが迫真の銃撃戦。
淡々と進むが迫真の銃撃戦。

 

物語冒頭の港のシーン。セリフがない。
物語冒頭の港のシーン。セリフがない。

 

解説リアリティーのある波止場界隈の生活やディティール描写もさることながら、緻密に計算された構成が映画的で際立っている。アクションシーンも抑え気味で、劇画・マンガとして成熟度が高い作品である。いたずらに感情的に煽ることのない淡々とした描写は説得力がある。昭和37年当時としては早すぎた劇画・マンガ作品かもしれない。古くからのミステリーファンに読んでもらいたいと思う。

 

☆作品紹介4/秋雨

 松本正彦20p/ 天下無双5集/金園社/A5判/劇画ファスト・プロのクレジットあり/Ⅷ・60とサインあり 

あらすじ仇を探している京四郎は、相思相愛の女性・「はぎ」を残して、仇探しに出ることを誓う。しかし、病床に在る「はぎの父親」こそが、捜し求める父の仇であった……。 

「秋雨/しゅうう」の扉。
「秋雨/しゅうう」の扉。
「秋雨」の冒頭。大道芸を行う浪人者のシーン。
「秋雨」の冒頭。大道芸を行う浪人者のシーン。
仇を討つべきか否か?苦悩する姿。
仇を討つべきか否か?苦悩する姿。
セリフのない右ページ、雨の中の2人を描く左ページ。

解説時代物である。短いページの作品ながら、淡々とした味わい深い佳品に仕上がっている。しかし当時はこういった「時代物マンガ」が今ほどは理解されていなかったのではないだろうか?

 

☆作品紹介5/墓場ジャングル

 松本正彦109p/単行本スタイル(*1)/すずらん出版/A5判/劇画ファストプロ名義/XI・60とサインあり 
 *1 ゲスト作品として篠原とおる「若人の歌」50pを収録

 あらすじ新橋五郎は、大物悪人ばかりを狙う殺し屋であるが、その人相は全く不明である。新橋五郎に手紙を預けられた男・牧次郎は、知らず知らずのうちに、麻薬に絡む巨大な犯罪に巻き込まれていく。「大ボス悪党・五十嵐」を知るクラブ歌手・摩理と親しくなった牧は、事件の核心へ迫る……。はたして、新橋五郎の正体は……?

「墓場ジャングル」単行本表紙。
「墓場ジャングル」単行本表紙。
作者まえがき。
作者まえがき。
「墓場ジャングル」扉ページ。
「墓場ジャングル」扉ページ。
クラブ歌手が殴打されるシーン。
クラブ歌手が殴打されるシーン。
テンポの良い乱闘シーン。
テンポの良い乱闘シーン。
ラストシーン。一抹の寂しさを残して終わるのが松本調である。
ラストシーン。一抹の寂しさを残して終わるのが松本調である。

解説ハードボイルド物。必殺仕置人的な設定の新橋五郎の存在が興味深い。
「ベレッタオートマチックはお前の腹をぶちぬく」
「新橋五郎に証拠は不用なのだ」
「これでこの世から汚れがひとつなくなった。そして俺の罪が一つ増えた」
……等のセリフ回しも痺れる。佐藤まさあきの「影男」の影響があるように感じるのは気のせいだろうか 。実際のところ作者自身はあまこの作品にり乗り気ではなく読者評価も低かった、ハクダイはそんな勝手想像をしてみたが、個人的には高く評価したい作品である。発表当時よりも今の方が面白さが理解できる読者が多いのではと思う。

 

◎掲載誌の他の作品について

(1)『静かなる男/熱血男児14号』併録作品
 『熱球の蔭に・前編』石川フミヤス(p20)/『嵐の一本松』阿部清一(24P)/『涙と友情』岡内俊夫(A6,16p)/『我等の仲間』桑畑たかみつ(24p)/『刑事とその息子』大塚三平(23p)/『俺にかわって生きてくれ』よりた・やすお(A6,16p)/『2は1にならづ』久呂田まさみ(35p)/他に(128ページに『ちょっと失礼』と題した1pの石川フミヤス氏の仕事場風景(絵と文)が掲載されている

(2)『裏窓/辰巳ヨシヒロマガジン3号』併録作品
 「殺し屋の歌」「劇画教室」「波紋」/辰巳ヨシヒロ
「俺の後を尾けるな」石川フミヤス/「殺し屋の群」泉竜太/「牛乳を飲む怪物」桜井昌一/「御幸運を祈って」太田隆一郎・松本正彦

(3)『秋雨/天下無双5集』併録作品
「斬死」南原竜也(40p)1960.8.23竜也プロダクション作品のクレジットあり/ 「怪僧伝奇図 拳骨和尚の巻」岩木緑水(6p)/「布告」桜井昌一(30p)/「鬼盗獄門史」久呂田マサミ(85p)/「天無修身読本 はったり浪人」メンフラ同人(7p)