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3.さいとう・たかを 実験的な共(競)作の試行


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貸本時代の興味深い活動~ゴリラマガジン

さいとう・プロが貸本マンガ時代、貸本向けに刊行した短編誌的(雑誌的)な性格の「ゴリラマガジン」は、1962年(昭37)から1966年(昭41)の間に47冊(集・号)発行された。マンガ・劇画家が自ら興した出版社が発行した「雑誌形式」のシリーズものとしては大成功を収めた部類だと思われる。このゴリラマガジンの初期については、さいとう氏が自ら提唱する「プロダクション制作」を「実験的に試行」している様子がうかがえる。ゴリラマガジンNo.1、2は現物を参照出来ていないが、No.3、4、5については実物を拝読できたので以下に紹介する。

☆ゴリラマガジンNo.3/1967年(昭42)

解説新企画無責任リレー劇画」と冠して3人の作家がそれぞれの作品を交換し結末を描く、という遊び心のある企画作品が楽しめる。作家たちがこの「競作」を始めるまでの経緯については作品の冒頭でマンガで説明されているのだが、永島氏とありかわ氏はともかく、さいとう氏にとっては、「3人で実験的な競作すれば核融合のように新しい何かが生まれるに違いない」という期待と明確な目的意識があったようにハクダイは感じた。

「新企画無責任リレー劇画」
・さいとう・たかを「隣の死人」→結末:ありかわ栄一が描く
・永島慎二「片うでの二人」→結末:さいとう・たかをが描く
・ありかわ栄一「老いたピエロ」→結末:永島慎二が描く

『ゴリラマガジンNo.3』表紙。「さいとう・たかを劇画マガジン」の記載あり。
『ゴリラマガジンNo.3』表紙。「さいとう・たかを劇画マガジン」の記載あり。
『ゴリラマガジンNo.3』もくじページ。リレー劇画の他に「ほいきたホイさんシリーズ」を収録。
『ゴリラマガジンNo.3』もくじページ。リレー劇画の他に「ほいきたホイさんシリーズ」を収録。
リレー作品の前説的な箇所。さいとう氏の作画だろうか?
リレー作品の前説的な箇所。さいとう氏の作画だろうか?
冒頭はさいとう作品。「さいとう・たかをプロダクション作品」と記載あり。
冒頭はさいとう作品。「さいとう・たかをプロダクション作品」と記載あり。
左は永島慎二作品の扉ページ。右はさいとう作品のエンディングページ。
左は永島慎二作品の扉ページ。右はさいとう作品のエンディングページ。
3番目に登場するありかわ栄一の見開き扉ページ。さいとう作品より線が太い印象。
3番目に登場するありかわ栄一の見開き扉ページ。さいとう作品より線が太い印象。

☆ゴリラマガジンNo.4、5

ゴリラマガジン4,5号-制作スタッフ
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ゴリラマガジン4,5号制作スタッフ
ゴリラマガジン4,5号制作スタッフ

解説ゴリラマガジン』4号、5号は、前作『ゴリラマガジン』3号の企画内容をさらに掘り下げた内容に進化している。1本の作品を前、中、後部の3つのパートに分け、3人の作家が各パートを「監督」するというスタイルになったようだ。

『ゴリラマガジンNo.4』表紙。中段左に「TAKAO」と記載あり。作画はさいとう氏だろう。
『ゴリラマガジンNo.4』表紙。中段左に「TAKAO」と記載あり。作画はさいとう氏だろう。
『ゴリラマガジンNo.4』もくじページ。「イカスこいつら」は前、中、後部の3部作で、各作家は「監督作品」として表記されている。
『ゴリラマガジンNo.4』もくじページ。「イカスこいつら」は前、中、後部の3部作で、各作家は「監督作品」として表記されている。
作品の前説的な部分。さいとう氏の作画と思われる。
作品の前説的な部分。さいとう氏の作画と思われる。
前説的な部分の続き。くじびきで作品の制作箇所の順番を決める3人の作家。
前説的な部分の続き。くじびきで作品の制作箇所の順番を決める3人の作家。
永島慎二氏が監督した、作品の前部。主要キャラクター3人は3作家がそれぞれ描いている。左から右へ、永島氏、ありかわ氏、さいとう氏の各氏の順。
永島慎二氏が監督した、作品の前部。主要キャラクター3人は3作家がそれぞれ描いている。左から右へ、永島氏、ありかわ氏、さいとう氏の各氏の順。
永島氏の作画と思われるページ。
永島氏の作画と思われるページ。
さいとう氏が監督した後部の最終ページ。ストーリーは『ゴリラマガジンNo.5』へ続く。
さいとう氏が監督した後部の最終ページ。ストーリーは『ゴリラマガジンNo.5』へ続く。
『ゴリラマガジンNo.5』表紙。メインの3人のキャラクター全てをさいとう氏が描いているようだ。
『ゴリラマガジンNo.5』表紙。メインの3人のキャラクター全てをさいとう氏が描いているようだ。
『ゴリラマガジンNo.5』もくじページ。
『ゴリラマガジンNo.5』もくじページ。
前巻(No.4)同様に前説的なマンガでスタート。当初の目論見では、どうやら、前巻(No.4)の1冊だけ、さいとう担当の後部部分で、物語は終わる予定だったようだ。
前巻(No.4)同様に前説的なマンガでスタート。当初の目論見では、どうやら、前巻(No.4)の1冊だけ、さいとう担当の後部部分で、物語は終わる予定だったようだ。
「イカスこいつら」完結編の前号のあらすじページ。全6pの最初の2p。
「イカスこいつら」完結編の前号のあらすじページ。全6pの最初の2p。
「イカスこいつら」完結編前部、ありかわ・栄一が監督した扉ページ。3人のキャラクターは3人の作家が描き分けているようだ。
「イカスこいつら」完結編前部、ありかわ・栄一が監督した扉ページ。3人のキャラクターは3人の作家が描き分けているようだ。

 

中部・永島慎二監督部分の扉ページ。2人の人物のキャラクターをメインで描いているのは永島慎二氏ではないと推測する。助手としてクレジットされている斉藤ゆずるの可能性が高いか?
中部・永島慎二監督部分の扉ページ。2人の人物のキャラクターをメインで描いているのは永島慎二氏ではないと推測する。助手としてクレジットされている斉藤ゆずるの可能性が高いか?